人間になれるなんてすごい( 10代 )
むかし、むかし、あるところに爺さんと婆さんとが暮らしてあった。爺さんは毎日山の畑のウネ打ちに行っておったと。ある日のこと、爺さんが畑のウネを打っていたら、畑の縁(へり)にあった石に猿(さる)が腰掛(こしか)けて、爺さんの悪口言うたと。
うぐいすが啼(な)く頃になりましたねえ。うぐいすはきれいな鳥で、ほんとに立派な巣うもこしらえるのよ。昔にね、うぐいすの巣うを鳩が見て、あんな立派な巣うをおれもこしらえられたらいいなあって。
あんたさん、こういう唄、知っていなさるかい。「泣き味噌小味噌笑ったら五文泣き味噌三文笑ったら五文あっぷっぷ」泣く子へのあやし唄でね、今はあまり聞かなくなりましたが、私ら子供のころはあちこちでよく唄っていましたよ。
昔、あるところに庄屋があった。庄屋には年頃の美しいひとり娘があったと。あるとき、庄屋の妻が畑へ出ていると、一匹の小んまい蛇がにょろにょろと出て来て、蛙を呑もうとした。
むかし、むかし、あるところに蟻(あり)と蜂(はち)があったと。あるとき道端(みちばた)のタンポポの花のてっぺんで蟻と蜂が出逢った。
とんとむかし、ある刀鍛冶のところへ、兼光(かねみつ)という若い男が弟子(でし)いりしたそうな。兼光はまじめに働(はたら)いて、師匠からも気にいられ、何年かすると師匠の向こう鎚(づち)を打つまでに上達したと。
むかしむかし、ある竹藪(たけやぶ)の中に、大きな虎が一匹住んでおったと。虎は日ごろから、ひととび千里(せんり)じゃ、と走ることの早いのを自慢(じまん)にして、いばっておったと。
とんと昔のことたい。筑前(ちくぜん)の国、今の福岡県の福間の里(ふくまのさと)に花見(はなみ)という街道(かいどう)が一本通っておって、その道は、いつでもおさん狐が化(ば)けて出るところじゃったげな。
むかし、あるところに婆(ば)さまと娘(むすめ)が暮らしてあったと。娘は山ひとつ向こうの隣村(となりむら)へ奉公(ほうこう)に行ったと。
むかし、ありましたそうや。今の和歌山県紀の川市に、昔は那賀郡田中村というた所がありましてのう、そこに、赤尾長者(あかおちょうじゃ)と呼ばれる長者がありましたそうや。子供がないのを悲しんでおったが、ようやく赤ちゃんが生まれた。
むかし、あるところに貧乏(びんぼう)な男が二人いたと。二人は借金(しゃっきん)がたくさんあって困(こま)っておった。とうとう、二人揃(そろ)って夜逃(よに)げをしたと。
昔、あるところに、それはそれは豪胆(ごうたん)な百合若大臣(ゆりわかだいじん)という武将(ぶしょう)があったと。百合若大臣は、ひとたび眠れば七日間も眠り続け、起きれば七日間も起き続けるという人であったと。
とんとむかし。あるところに、兄と弟が住んでおった。あるとき、兄は病気になって、ちっとも働けんようになってしまった。それで、弟は、「あんちゃんの分まで、おれが働かないかんな」と、毎日毎日、汗みどろになって働いていた。
むかし、窪川(くぼかわ)の万六(まんろく)といえば、土佐のお城下から西では誰一人として知らぬ者はない程のどくれであったと。ある日、あるとき。旦那(だんな)が所用(しょよう)があって、高知(こうち)のお城下まで行くことになったそうな。
むかし、あるところに貧乏な若者が一人暮らしておったと。ある冬の日、雉(きじ)が鉄砲撃(てっぽうう)ちに追われて薪木(まきぎ)を積み重ねたかこいにささっているのを見つけて、助けてやったと。
昔、あるところに、ちゅうごく忠兵衛(ちゅうべえ)さんという人があった。なかなかの善人(ぜんにん)だったと。ある冬のこと。その日は朝から雪が降って、山も畑も道も家もまっ白の銀世界だと。寒うて寒うて、だあれも外に出ようとせんかったと。
昔昔のあるとき、和泉の国の岡田浦で鯛とふぐが一緒に漁師の網にかかって死んでしまったと。鯛とふぐは連れだって西の方へ歩いて行った。三途の川も渡って、なおも歩いて行くと・・・
むかしむかし、あるところにおっ母さんと息子とが居てあったと。息子は山で薪(たきぎ)を伐(き)っては町方へ売りに行き、親子二人その日その日を暮していたと。
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語り:井上 瑤/平辻 朝子
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