首ちょん切ったら普通、死ぬんじゃないん?血は出たんかな? 殿様は不死身…!?(怖)( 女性 )
― 大分県 ―
語り 平辻 朝子
再話 六渡 邦昭
むかし、豊後(ぶんご)の国、今の大分県(おおいたけん)臼杵市(うすきし)野津町(のつまち)大字(おおあざ)野津市(のついち)というところに、吉四六(きっちょむ)さんという、とても面白(おもしろ)い男がおった。
あるとき、吉四六さんがお庄屋(しょうや)さん方の前を通りかかったら、ご隠居(いんきょ)さんに呼(よ)び止められた。
ご隠居さんはとても話好きで、これまでも吉四六さんの姿を見かけるたびに話をせがんでおったと。
「これ吉四六、なにも首(くび)だけそっぽを向いて行くことはなかろう。ちいっと茶でも飲(の)んでいかんか。ほれ、ここへ来て腰掛(こしか)けんか。よしよし。ところで吉四六、何ぞ面白い話はないか」
吉四六さんも、「やれやれ」と口ではいうけれど、動きはちっとも嫌(いや)そうではない。
「話してもええよ。話は話すけえど、俺(おれ)の話にいちいち、『そりゃ嘘(うそ)じゃろ』といわれては話してみたところで面白うない。あれを止(や)めてくれたら話す」
「いや、いわん。決(けっ)していわん・・・・・・つもりじゃが・・・・・・そうじゃ、こうしよう。もしいったら、米俵(こめだわら)を一俵(いっぴょう)やろう」
<ほうら、おいでなすった。そうこなくっちゃあ面白うない>
心の内(なか)でにんまりした吉四六さん、
「そこまでいわるるんなら、まっ、ええじゃろう」
いうて、話し始めたと。
「あるところに殿様(とのさま)があってなぁ、お駕籠(かご)に乗(の)っち、江戸(えど)へのぼりよった。山道にさしかかると、どっかからトンビが一羽(いちわ)飛んで来ち、ピーヒョロロ、ピーヒョロロいうち、殿様んお駕籠のまわりをグルグル廻(まわ)ったんと。
それが殿様の耳に入っち、お駕籠を止めて外へ下(お)り立って見上げたら、トンビは殿様のハカマに糞(ふん)を落としたと。
お小姓(こしょう)があわてて別のハカマを持ってきち、お召(め)し替(か)えして、また、お駕籠に乗っち行きよったそうな。
殿様にゃ、ハカマが幾(いく)つもあるのじゃろうかいのう」
「そりゃ殿様じゃもん。ハカマのお替えもあろう。それからどうした」
「一、二里(り)も行くと、また、空でトンビがピーヒョロロ、ピーヒョロロと啼(な)いた。
殿様がまたお駕籠を下りて空を見上げたら、トンビは殿様ん刀(かたな)に糞を落としたと。
殿様は新しい刀と取り替えち、また駕籠に乗っち、行きよったそうな。
殿様にゃ、刀が幾(いく)振(ふ)りもあるのじゃろうか」
「殿様じゃもん。あるじゃろう。それより、それからどうした」
「もう二、三里行くと、またまたトンビが啼(な)く。殿様が不思議に思うち、お駕籠を下り、空を見上げたとたん、あろうことか、今度は殿様の頭に糞を落としたんと」
吉四六さん、ここで話を止めてご隠居さんを見ると、ご隠居さん何かいいたそうに口をモゴモゴしておる。吉四六さんは話を続(つづ)けた。
「すると殿様は、『早う首の替えを持って参れ』とおいいになって、刀でサッと、ご自分の首を切り落としなされたち。そして、お小姓が長持ちから出してきた新しい首を据(す)えて、江戸へのぼったと」
と話したからご隠居さん、思わず、
「何と、吉四六、そりゃ嘘ではないかえ」
というた。
にんまりほほえんだ吉四六さん、
「はい、ありがとうございやす」
ちいうち、米俵を一俵担(かつ)いで、とっとと去(い)んだそうな。
もしもし米ん団子(だんご)、早う食わな冷(ひ)ゆるど。
首ちょん切ったら普通、死ぬんじゃないん?血は出たんかな? 殿様は不死身…!?(怖)( 女性 )
殿様だからいろいろ他のものを持ってるのはわかるけど、首も持ってるなんてすごい!( 10歳未満 / 男性 )
むかし。相模湾の三ツ石の沖にサメの夫婦が住んでおったと。夫婦は、ここへ漁師の舟が来ると追い返しては、子ザメを守っておったと。「三ツ石へ行くでねぇ。主のサメにおそわれるぞ」と、漁師たちは、この沖を地獄のように恐れて近寄らなかったと。
「首の取り替え」のみんなの声
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