民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 特異な能力にまつわる昔話
  3. 子供と猫絵

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

こどもとねこえ
『子供と猫絵』

― 富山県 ―
語り 井上 瑤
話者 田口作次郎/伊藤タメ
再話 六渡 邦昭

 むかし、むかし、あるところに絵を画(か)くことが大好きな子供がおった。
 とりわけ猫(ねこ)が好きで、いつも猫の絵ばかり画いていたと。

 あるとき、
 「おら、絵を画きながら諸国(しょこく)を旅して歩きたい」
といって、絵道具(えどうぐ)を担(かつ)いで旅に出たと。


 行くが行くが行くうちに、日が暮れた。
 どこか泊(と)めてくれる家がないかと頼(たの)んでまわったが、誰も泊めてくれない。仕方なく、人の住んでいない荒(あ)れ果(は)てた空(あ)き寺へ入って泊まることにしたと。
 その寺が空き寺になっているのには理由(わけ)があった。その寺に泊まった者は、夜になると出て来る化け物に、きっと食べられてしまうそうな。
 そんなところへ、子供が一人で泊まったものだから、村の人たちは、
 「今夜また、あの子が化け物に食べられてしまうのだな。かわいそうに」
とうわさをしておったと。

 そんなことはとはつゆ知らず、子供は寺へ入るとすぐ荷物(にもつ)を解(と)いて、大好きな猫の絵を画き、御堂(おどう)の隅(すみ)から隅まで張(は)りつけたと。


 それから、ごろりと横になったが、何とはなしに恐(お)ろしくて、どうにも眠れなかったと。
 真夜中(まよなか)になり、どこかでコトンと音がしたようだが、その後は気配(けはい)もない。うとうととして寝たと。

 次の朝、目を覚ました子供は、思わず息を飲んだ。なんと、年とった大きな化けネズミが一匹、噛(か)み殺(ころ)されていた。
 「ああ恐(こわ)い、こんなとこ早いとこ立ち去(さ)ろう」
というて夕べ画いて張りつけておいた猫の絵を集めようとして、またまたびっくり。
 猫の口に、みんな血がついていたと。
 絵の猫が、みんな飛び出して、化けネズミを噛み殺したらしい。

 心配してやって来た村人たちも、子供が生きていたのでみんな驚(おどろ)いた。驚いてから、その絵のあまりの出来ばえに目を見張り、一心(いっしん)こめて画いたものには魂宿(たましいやど)るものだなと、うなづきあったと。
 これでおしまい べろりん。

「子供と猫絵」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

驚き

猫の絵が飛び出て化けネズミを倒したなんて、すごい!( 10歳未満 / 男性 )

楽しい

猫ちゃんが助けてくれたんだ、よかった。( 50代 / 女性 )

怖い

朝起きたら死体が・・・。ブルブルッ( 10歳未満 / 女性 )

もっと表示する
驚き

朝起きたら、大きなネズミが死んでるなんて、びっくり!( 10歳未満 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

約束ごと(やくそくごと)

 むかし、ある村で一日に十人の男の子が産まれたそうな。  どの親も皆々(みなみな)お寺の和尚(おしょう)さんのところへ行って、名前をつけて下さいって、頼(たの)んだと。

この昔話を聴く

大分県の笠地蔵・ばっちょ笠(ばっちょがさ)

むかし、むかし、あるところに、爺(じい)さんと婆(ばあ)さんが住んでおったと。家が貧乏(びんぼう)で、年取りの夜(よ)さになっても、一粒(ひとつぶ)…

この昔話を聴く

庚申待ちの謎(こうしんまちのなぞ)

 昔、あるところに貧乏(びんぼう)な爺(じい)さんがあった。  爺さんの田圃(たんぼ)へ行く途中(とちゅう)の岐れ道(わかれみち)のところに、庚申様(こうしんさま)が祀(まつ)られてあった。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!