何でも面倒でも言葉を出すのはできてしまうんですよね( 10代 / 男性 )
― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、あるところに無精者(ぶしょうもの)の男があったと。
あるとき、男は用たしに町へ出かけたと。
家を出しなに、女房(にょうぼう)は握(にぎ)り飯(めし)をこしらえて、無精な亭主(ていしゅ)の首にくくりつけてやったと。
男はのんびりのんびり歩いて、昼頃(ひるごろ)になったら腹がへった。首に握り飯がくくりつけられてはいるが、手を動かすのがめんどうくさい。
「ま、いいや。向こうから誰(だれ)かきたらとってもらおう」
と言うて、懐手(ふところで)をして歩いて行ったら、うまいあんばいに、向(む)こうから口を大きく開けた男がやってくる。無精な男は、
「あんなに口を開けているところ見ると、よっぽど腹が空(す)いているにちがいない。あの人に頼(たの)んで、首から握り飯をとってもらおう」
と、待っていたら、大口を開けた男が目の前へやってきた。
「もし」
「あーん、わしに何か用か」
「んだ。わしは首に握り飯をくくりつけてあるんだが、あんたさん、包(つつ)みをほどいて握り飯を出してくれんじゃろか。ついでにわしの口の中にひとつ食わえさせてくれ。そしたら、あんたさんに半分(はんぶん)、わけてあげるが」
こう頼んだと。
そしたら、大口を開けた男は、
「わしはさっきから、笠(かさ)の紐(ひも)がゆるんで困(こま)っているが、その紐を結(むす)びなおすのがめんどうで、めんどうで、それでこうして口を開いて、笠が頭から落ちんようにしているところだ。我(わ)が紐を結ぶのもめんどうなのに、お前さんの首の包みをほどくなんぞ嫌(いや)なこった」
こう言うたと。
それっきり。
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「二人の無精者」のみんなの声
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