小学校3年生の演劇の発表会があさことゆうこで私はあさこ役でしたが、なんとなくしか内容を覚えてませんでした。懐かしくなり当時を思い出しました。これこれと感動です。( 60代 / 女性 )
― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、あるところに山があって、東側と西側のふもとには小さな村があったそうな。
二つの村は、ささいな争い事が因で、もう永い間往き来をしていなかったと。
歩く者が無くなった山の道は、いつしか熊笹が生(お)い繁(しげ)って、昔、道があったことさえ分からないありさまになっておったと。
時々、道を作ろうという話が出るのだが、そのたびに、
「だども、俺ら方(ほう)が作っても、向こうが作らねえんじゃ、しょうがなかべ」
ということになって、話が消えてしまう。
両方の村人達は不便でしょうがなかったと。
そんなある年、両方の村で、とっても可愛いい女の赤ん坊が生まれたと。
東の村の子は朝方生(あさがたう)まれたのて「あさこ」
と名付けられ、
西の村の子は夕方生まれたので「ゆうこ」
と名付けられたと。
あさことゆうこはすくすく育って、やがて賢い、いい娘(むすめ)になったと。
ある日、東の村の寄り合いで、
「あさこだば、この村どころか、まんず西の村にもかなう者はなかべな」
「んだ、それだば、まんず、西の村と頓知合戦をやろうかい」
「んだ、勝ったら西の村を俺(お)ら方(ほう)の子分(こぶん)にして、山さ道を作らすだ」
「んだ、んだ」
と、こんな話がまとまった。
村の猟師が矢に手紙を結びつけて、山の頂上から西の村へ射放(いはな)ったと。手紙には、
一、何月何日(いついっか)、山の頂上で頓知合戦をしよう。
東の村からは娘一人を出す。
一、負けた方の村は、山に道を作ること。
と書いた。
この矢文(やぶみ)を受けとった西の村では、すぐに寄り合いを持ったと。
「東の村が、大口たたいて来おったわ」
「俺ら方には、ゆうこという村一番の頓知娘がおるのを知らんのじゃ。」
「これで、へえ、東の村は俺ら方の子分と決まったようなもんじゃ」
ということになって、すぐに「承知」と書いて、矢文で射返したと。
いよいよ頓知合戦の日が来た。
東の村からはあさこ一人が、西の村からはゆうこ一人が、山の頂上へ上って行ったと。
二人は頂上で出会うてみて驚ろいた姿形(すがたかたち)といい、年頃といい、そっくりだった。話し合うてみると、生まれた日まで同じだったので、すっかり仲良うなったと。そして、
「俺らたち二人で、東の村と西の村とのいがみあいを無くそ」
と知恵を出し合うたと。
両方の村では、皆々首を長くしてあさことゆうこが戻ってくるのを待っておった。
あさこは夕方になって東の村に戻ったと。
「どうだったかや」
「もちろん勝ったさ、な、あさこ」
あさこは首を横に振った。
「ん、どういうこんだ」
「頓知合戦は引き分けになっただ。それで次の勝負を決めて来た。両方の村が、明日の夜明けから一斉(いっせい)に山の頂上まで道を作りはじめ早く作りあげた方が勝つ、という方法だ」
「ようし、俺ら方の村には力持ちが多い。なあに、気を揃(そろ)えてやれば、へえ負けるもんじゃねえ」
次の朝、東の村でも、西の村でも、道作りが始まった。晴れの日も、雨の日も、村中総がかりだと。道は山の頂上に向って、グングン延びて行った。
頂上に最初のひと鍬(くわ)を振り入れたのは、東の村の・・・ではなく、西の村のではなく、全く同時だったと。
「ええい、もうちいっと早かったら、俺ら方が勝ったのに」
「そらぁ、俺ら方でも同じだべ」
出会うてしまえば、もともと気のええ村人たちだもん、いつしか心もほぐれて、山の頂上で宴会がはじまったと。酒を呑み交しながら、
「しかしまあなんだ、よくも同時に出来上ったもんださ」
「そういえば、俺ら方のあさこが、時々、ここで、お前ぇ方のゆうこと出会うておったようだが、一体ぇ、何を話し合うていたんだかな」
と話合うているそばで、あさことゆうこは手を握り合うて嬉しそうに微笑んでおったと。
二つの村は、それからは争いも起こさず、村人がこの道を通って、いつまでも仲よう往き来したそうな。
おしまい ちゃん ちゃん。
小学校3年生の演劇の発表会があさことゆうこで私はあさこ役でしたが、なんとなくしか内容を覚えてませんでした。懐かしくなり当時を思い出しました。これこれと感動です。( 60代 / 女性 )
よかった
小学校で読んだ絵本を探し続けてやっとたどり着きました。 二人の少女が山中で出会い仲良くなるシーンが印象に残ってます。( 20代 )
相手の村にいうことを聞かせるため、頓智合戦へと送られた二人の女の子がとてもなかよくなってしまい、いがみあう村同士を仲直りさせるためにその知恵を使うという筋書きが意外で面白く、皆しあわせそうな結末に心温まりました。( 30代 / 男性 )
むかし、窪川(くぼかわ)の万六(まんろく)といえば、土佐のお城下から西では誰一人として知らぬ者はない程のどくれであったと。ある日、あるとき。旦那(だんな)が所用(しょよう)があって、高知(こうち)のお城下まで行くことになったそうな。
「あさこ、ゆうこ」のみんなの声
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