その人のことをあまり知らずに一緒に暮らすなという教訓ですね。( 10代 / 男性 )
― 群馬県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、むかし、あったとさ。
あるところに吝(けち)な男がいてあった。いつも、
「飯(まま)食わねで、仕事をうんとする嬶(かかあ)欲しい」
というていた。
あるとき、一人の女が男の家に訪ねてきた。
「おれ、飯食わねで仕事ばかりだ。嬶にしてくりょ」
という。男は喜んで嬶にしたと。
嬶はよく働いた。飯も食うてる風(ふう)でもない。
「ほんとにええ嬶じゃ」
といよいよ嬉しくなって仕事にせい出していたと。
が、七日も過ぎ、十日目も来ようかという頃になって、米俵が少なくなっているのに気がついた。
男は嬶に、
「おめ、米俵、どこかへやったか」
と聞いたら、
「おら、知んない」
という。味噌樽(みそだる)を調べたら、それと分かるほど減っている。あんまり変だから、次の朝、仕事に行くふりをして、梁(はり)に上って、隠れて嬶の様子を見ていたと。
そしたら嬶は、倉から米一俵かついできて、馬(ま)ぐさ煮る釜で一度にみな炊いた。大っきな鍋に味噌をドサッと入れて味噌汁こしらえた。 戸板(といた)をはずして釜のそばへ置き、塩一升用意すると、米一俵分の握り飯こしらえて戸板に山のように積んでいった。
そんなに握ってどうするのかと、見ていたら、嬶は頭の髪の毛ほぐしはじめた。
そしたらなんと、頭のてっぺんがザックリ割れて、大っきな口があいた。
嬶はその口へ、握り飯をポイポイ、ポイポイ投げ込んでは、大鍋の味噌汁をひしゃくですくって、ザァザァそそいでいく。握り飯も味噌汁も、あっという間に、頭の口に、みなのみこまれてしまったと。
男は、おっかなくなって、こんな化物、一日とて家に置かれないと、晩方、仕事から帰ったような顔して、
「今帰った」
というた。嬶も、嬶の顔して
「あや、おかえりなさい」
というた。男は、いよいよ、えらいもんを女房にしたと思うた。男が、
「嬶、嬶、今日おれァ山さ行ったれば、山の神さまいてあってな、『お前(め)の嬶ええ嬶だども、家さ置いとくと障(さわり)あるから、今のうちに出せ』と云われた。こういう御託宣(ごたくせん)だから、お前悪いけど出て行って呉(け)れ」
というたら、嬶は、
「出て行けって云うんじゃ出て行きもするが、土産に風呂桶(ふろおけ)と縄(なわ)ァ一巻(ひとまき)もらいたい」
というた。
男が仕度をしてやると、嬶は、
「この桶ァ乾(かわ)いて底が抜けちゃいけないから、お前、ちょっくら入って見てくりょ」
という。男が入ると、今度は、しゃがんでみてくりょという。男がしゃがんでみせると、嬶は、風呂桶に縄をかけて、男が入ったまんま担ぎあげて、山さ、ぐえらぐえら駈(か)けあがっていった。嬶は鬼婆(おにばば)であったと。
男が、怖いじゃぁ、怖いじゃぁ、思うて身をすくめていたら、鬼婆はひと休みした。
そしたら、ちょうど上から木の枝がぶらさがっていたので、それにつかまって、そおっと逃げたと。
やがて、鬼婆、風呂桶担いで、また、登っていった。
「休んだら軽いなぁ、休んだら軽いなぁ」
と唄いながら登っていって、やがて山のてっぺんさついて、
「みんな来ォやぁい、いい肴(さかな)持って来たァ」
と呼ばった。仲間が、ワサワサ集まってきた。
鬼どもが風呂桶をのぞいたら、何もない。
「やあ、そんじゃ、途ちゅうで逃げられたか」
というて、鬼婆、あわてて元の道を捜しに戻った。男はじきに見つかったと。 あわやつかまる、というとき、男は蓬(よもぎ)のいっぱい生(は)えている中に跳(と)び込んだ。
そしたら鬼婆、その草に触(さ)わると身がとける、ゆうて、蓬の中に入って来(こ)ない。
鬼婆が帰って行ったので、男は走って山を下りた。そしたら、また追っかけてきた。
あわやつかまる、というとき男が跳び込んだのが菖蒲(しょうぶ)がいっぱい生えている中(なか)だった。
そしたら鬼婆は刀がこわい、刀がこわい、というて、菖蒲の中に入ってこない。
菖蒲の葉が刀に見えるらしいのだと。
鬼婆、とうとうあきらめて、山へ帰って行った。男は無事に助かって家へ帰れたと。
ちょうどその日が五月五日だったので、五月節句には魔除(まよ)けに屋根へ蓬や菖蒲をさすようになったそうな。
いちがさかえた。
その人のことをあまり知らずに一緒に暮らすなという教訓ですね。( 10代 / 男性 )
口が上手く近寄ってくる者には注意せよ、という 教訓ですね。( 40代 / 女性 )
好条件をうたう女には気をつけろという教訓に思えます 食べて寝る、働く、当たり前のことをしてくれる相手には食べさせてあげる覚悟をもって一緒になりなさいという教えだと思います 男の愚かさも昔から同じだったのかも?( 40代 / 女性 )
教訓は知らない人と付き合わないことです。 ( 20代 / 男性 )
「食わず女房」のみんなの声
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