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いしわりこびき
『石割り木挽』

― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
再話 本城屋 勝
整理・加筆 六渡 邦昭
資料 みちのく第2号 みしま書房

 昔コあったじょな。
 むかし、南部、今の秋田県のあるところで、家普請(いえぶしん)をするとて、木挽(こびき)を頼(たの)むことになったど。
 そこの旦那(だんな)は、どこの家より立派な家を建てようと、遠くの親戚に頼んで腕(うで)のたつ木挽を探してもらったど。そしたらある日、南部一の木挽がやって来たど。

 
石割り木挽挿絵:福本隆男

 はじめの日、その木挽はノコばかり研(と)いでいたど。そして次の日、朝飯を食ったらば、また、ノコを研ぎはじめたど。そして一日中ノコばかり研いでいたど。


 三日目の朝ま、木挽は、またノコを研ぎはじめたど。
 旦那は高い銭(ぜに)コを払っている木挽なので、気が気でねェぐなって、
 「二日も三日もノコを研いだら、木っコどころか、石も挽(ひ)くことが出来るようになるべ」
と、木挽を皮肉(ひにく)ったど。
 したば、木挽、
 「そうだな。石も挽くにええ」
と、しゃべったけど。


 旦那は怒(おこ)って、
 「それだら、縁先の所さ置いてある石を、真ん中から二つに挽いてみればええ」
としゃべったど。
 木挽は、さっそくと縁側の所さ行って、そこにある庭石(にわいし)を、ガリガリと音をたてて、真ん中から挽いて、下の方を少しだけ残したど。
 
石割り木挽挿絵:福本隆男


 「これは挽き残りといって、木挽の作法(さほう)で残すことになっている所だ」
と、しゃべって、ノコを鞘(さや)に収めたど。して、
 「まんず、やる気が無ぐなった」
と、出て行こうとしたっけど。
 旦那は、これはきっと、神さまが木挽に化けてやって来たのだべ、と思って、木挽の前さひざを折って、
 「いてたもれ」
と、頼んだど。


 んだが、木挽は
 「おらは師匠(ししょう)から、ノコを研ぐのを待っていられねえ家には、長くいるものではねえ、と教えられているから、行ぐ」
と、いって、とうとう行ってしまったけど。
 その木挽が二つに挽いた庭石は、今でも、南部に残っているど。
 

 どんとはねた。
 

「石割り木挽」のみんなの声

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