― 山口県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、あるところにひとりの婆(ばあ)さんがあった。
婆さんは、お年貢(ねんぐ)の頃に上納(じょうのう)する米の計量(はかり)をちょろまかすのがうまくて、役人(やくにん)は困(こま)りはてていたと。
どんなに目をこらしていても巧(たく)みに桝目(ますめ)をごまかしたと。
殿様(とのさま)はくやしくてならんのだと。そこで、二人の役人に言いつけて、その婆さんの米を量(はか)る番をさせて、
「それでもなお桝目をごまかせたなら、上納米をゆるしてやろう。もし露顕(ろけん)したら重い罰(ばつ)を与(あた)えよ」
というたと。
婆さんは二人の役人のいる前で、一升(いっしょう)、二升と量っていったが、二人も目を光らせているので、桝目をごまかす事が出来ない。
婆さん、どうしてごまかそうと、色々考えたと。そして、顔をまっ赤にして気張(きば)って、ひとつ大きな屁(へ)をひった。
その臭(くさ)いこと。
役人は思わず顔をそむけた。
その隙に婆さんは素早く米をつかんで、筵(むしろ)の下へ隠(かく)した。
そしてなにくわぬ顔をして、また、一升二升と量ったと。量り終わって、役人は、
「わしたち二人にニラまれていては、さすがの婆も、よう盗(ぬす)めなかったろう」
と、得意(とくい)になっていうた。
婆さんは、黙(だま)って筵の下から米を出して見せたと。
これきりばったりひらの蓋(ふた)。
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むかし、むかし、あるところに獺(かわうそ)と狐(きつね)があって、道で行き合ったと。狐が、 「ざいざい獺モライどの、よい所で行き合った。実はこれからお前の所さ話しに行くところだった」 というた。
「屁ひり婆の話」のみんなの声
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