― 新潟県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔、江戸のほら吹きが越後(えちご)のてんぽこきのところへ、ほらくらべにやって来たそうな。
ところが、その時はちょうど越後のてんぽこきが留守だったので、その子供が出て来たと。
「お父つぁん、おらんか」というと、子供は
「あののし、うちのおとっつあんは、この前の風で弥彦山(やひこやま)がかしがったんで線香三本持って、突っかい棒をかがいに行った」
と言う。
江戸のほら吹きは、
「こいつは、子供のくせして、なかなかやるわい」
と思いながら、
「母ちゃんはどこへ行ったな」
と聞くと、
「かかさはな、天竺(てんじく)が破れたんで、虱(しらみ)の皮ぁ三枚持って、つぎに行かした」
と言う。江戸のほら吹きは、
「そうかい、そいつはごうぎなことだ」
と、言いながら、そんなら、この子供をへこましてやろうと思って、
「実はな、このあいだの風で、奈良の大仏さまの鐘がこのへんに飛んで来たはずなんだが、お前知らんかい」
とやってみた。
ところが、子供はすぐに、
「あぁ、そんなら俺らん家(ち)の、裏の蜘蛛(くも)の巣に引っかかってら」
と返した。
これには江戸のほら吹きもさすがにおどろき、
「子供ですらこんな調子じゃぁ、親はさぞかし、とんだ大ぼら吹きにちげぇねぇ」
と、舌を巻いて帰ってしまったそうな。
いきがさけもうした なべのしたガラガラ。
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昔、豊後(ぶんご)の国、今の大分県臼杵市(おおいたけんうすきし)野津町(のつまち)大字野津市(おおあざのついち)というところに、吉四六(きっちょむ)さんという頓智(とんち)にたけた面白い男がおった。
むかし、ある村にすぐれた娘(むすめ)をもった長者があった。 娘は器量もよいが、機織(はたおり)の手が速く、朝六(む)つから暮(くれ)の六つまでに一疋(いっぴき)の布(ぬの)を織(お)り上げてしまうほどだったと。
「ほらくらべ」のみんなの声
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