民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 大きな話・法螺話にまつわる昔話
  3. ほらくらべ

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

『ほらくらべ』

― 新潟県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、江戸のほら吹きが越後(えちご)のてんぽこきのところへ、ほらくらべにやって来たそうな。
 ところが、その時はちょうど越後のてんぽこきが留守だったので、その子供が出て来たと。
 「お父つぁん、おらんか」というと、子供は
 「あののし、うちのおとっつあんは、この前の風で弥彦山(やひこやま)がかしがったんで線香三本持って、突っかい棒をかがいに行った」
と言う。
 江戸のほら吹きは、
 「こいつは、子供のくせして、なかなかやるわい」
と思いながら、
 「母ちゃんはどこへ行ったな」
と聞くと、

 「かかさはな、天竺(てんじく)が破れたんで、虱(しらみ)の皮ぁ三枚持って、つぎに行かした」
と言う。江戸のほら吹きは、


 「そうかい、そいつはごうぎなことだ」
と、言いながら、そんなら、この子供をへこましてやろうと思って、
 「実はな、このあいだの風で、奈良の大仏さまの鐘がこのへんに飛んで来たはずなんだが、お前知らんかい」
とやってみた。
 ところが、子供はすぐに、
 「あぁ、そんなら俺らん家(ち)の、裏の蜘蛛(くも)の巣に引っかかってら」
と返した。
 これには江戸のほら吹きもさすがにおどろき、
 「子供ですらこんな調子じゃぁ、親はさぞかし、とんだ大ぼら吹きにちげぇねぇ」
と、舌を巻いて帰ってしまったそうな。

 いきがさけもうした なべのしたガラガラ。

 

「ほらくらべ」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

金樽鰮(きんたるいわし)

丹後(たんご)の国(くに)は宮津地方(みやづちほう)、今の京都府の日本海に面した宮津湾(みやづわん)に「天(あま)の橋立(はしだて)」というのがあり…

この昔話を聴く

河童の手紙(かっぱのてがみ)

 むかし、あるとことに大きな沼(ぬま)があった。  沼の東のはずれに、兄と弟が隣(とな)りあって暮(く)らしてあったと。  兄は、沼のまわりの繁(しげ)り過(す)ぎた木の枝(えだ)を払(はら)ったり…

この昔話を聴く

仏を焼いた狩人(ほとけをやいたかりゅうど)

 昔、ある山間(やまあい)に一軒(けん)の家があって、男と女房(にょうぼう)とは暮(く)らしていたと。  家の前の道、ときどき、猟師(りょうし)たちが猪(いのしし)だの熊(くま)だの獲物(えもの)を担(かつ)いで通ったと。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!