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ねずみのかねほし
『ネズミの金干し』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、あるところに爺さがおったと。
 爺さ、山に焼畑(やきはた)に行ったと。
 四隅(しすみ)を畝(うな)い、木組(きぐみ)をして焼き飯を供(そな)え、山の神にお祈りをしてから、草に火をつけた。
 そしたら、ネズミが穴からぞろぞろ、ぞろぞろ出てきた。その一匹一匹が一枚ずつ小判を咥(くわ)えていて、金干したと。
 爺さ、煙管(きせる)できざみ煙草(たばこ)をのみながら、ネズミの金干しの様子を見ていたと。
 ネズミは小判いっぱい干すと、しまいに人形立てて、その人形に、
 「雨降ってきたら教えろよ」
 て、いうて、穴にもどっていったと。
 爺さ、こんなこともあるものかと、不思議がっていたが、ネズミどもがいなくなると、その小判をみんな持って家に帰ったと。

 
 婆さに、これ見ろや、というて、ふところから小判をとり出して、ザン、ザランとまき散らした。
 「あれや、爺さ、こんなに一杯の黄金(こがね)、どうしたや」
 「なに、あれだや。今日な、焼畑に山さ行ったら、穴からネズミが小判一枚ずつ咥(くわ)えてきて、火の熱で金干したから、もろうて来たや」
 「あれぇ、そだったかい。それはよかった」
と、こう話して聞かせていたのを、ザン、ザランという黄金の音を聞きつけて来た隣の婆、聴耳(ききみみ)立てていた。
 「これはいいことを聞いた。俺家(おらえ)の爺もやんねばなんね」
と、ほくそ笑(え)んで、早速、爺に、これこれこうと話したと。
 次の日、隣の爺、山さ行って焼畑したと。
 そしたら、やっぱりネズミ穴からネズミが小判一枚ずつ咥(くわ)えて、ぞろぞろ、ぞろぞろ出てきた。して、火熱(ひねつ)で小判を干したと。
 人形立てて、
 「雨ぁ降って来たら、教えろ」
というて、穴にもどっていったと。


 隣の爺、これぁしめたもんだ、と思ったら、小便したくなった。小便したら、金干ししてある小判と人形にひっかかった。人形が、
 「雨よ、雨よ」
と声を出したら、ネズミどもがわらわら出てきて、すぐにしまってしまったと。
 隣の爺、小判一枚も盗(と)ってこれなくて家に戻ったら、婆、
 「この腐れ爺」
というて、爺のこと火吹き竹でぶったたいたと。

 とーぴったり。

「ネズミの金干し」のみんなの声

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