民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 頓知のきく人にまつわる昔話
  3. 屁ひり婆の話

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

へひりばあのはなし
『屁ひり婆の話』

― 山口県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、あるところにひとりの婆(ばあ)さんがあった。
 婆さんは、お年貢(ねんぐ)の頃に上納(じょうのう)する米の計量(はかり)をちょろまかすのがうまくて、役人(やくにん)は困(こま)りはてていたと。
 どんなに目をこらしていても巧(たく)みに桝目(ますめ)をごまかしたと。

 殿様(とのさま)はくやしくてならんのだと。そこで、二人の役人に言いつけて、その婆さんの米を量(はか)る番をさせて、
 「それでもなお桝目をごまかせたなら、上納米をゆるしてやろう。もし露顕(ろけん)したら重い罰(ばつ)を与(あた)えよ」
というたと。

 
 婆さんは二人の役人のいる前で、一升(いっしょう)、二升と量っていったが、二人も目を光らせているので、桝目をごまかす事が出来ない。
 婆さん、どうしてごまかそうと、色々考えたと。そして、顔をまっ赤にして気張(きば)って、ひとつ大きな屁(へ)をひった。
 その臭(くさ)いこと。
 役人は思わず顔をそむけた。
 その隙に婆さんは素早く米をつかんで、筵(むしろ)の下へ隠(かく)した。
 そしてなにくわぬ顔をして、また、一升二升と量ったと。量り終わって、役人は、
 「わしたち二人にニラまれていては、さすがの婆も、よう盗(ぬす)めなかったろう」
と、得意(とくい)になっていうた。
 婆さんは、黙(だま)って筵の下から米を出して見せたと。

  これきりばったりひらの蓋(ふた)。

「屁ひり婆の話」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

八右衛門出口(はちえもんでぐち)

 むがし、甲斐の国、今の山梨県(やまなしけん)北巨摩郡(きたこまぐん)の大泉村(おおいずみむら)というところに、谷戸八右衛門(やとはちえもん)という男がおったと。

この昔話を聴く

とげぬき地蔵(とげぬきじぞう)

江戸時代の中ごろ、江戸の小石川、今の文京区に、病の妻を持つ田村という侍がいてたいそうお地蔵さまを信心しておった。侍は、毎日、毎日、妻の病が早くなおる…

この昔話を聴く

江戸見物(えどけんぶつ)

 むかしむかし、あるところに在郷太郎(ざいごうたろう)がおった。少々小金が貯まったので、江戸見物に出掛(か)けたと。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!