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ざとうさまとぼたもち
『座頭さまとボタ餅』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 佐藤 義則
整理・加筆 六渡 邦昭

 昔、あるどこさ、爺(じじ)と婆(ばば)、あったけド。
 あるどぎ、旅道中(たびどうちゅう)の座頭(ざとう)さま、
 「どうぞ、一晩泊めて呉(け)らっしぇ」
 って、訪ねてきたけド。爺婆ぁ、
 「良(え)げす、えげす」
 って泊めだげんとも、困ったごどにゃ、ほの晩餉(ばんげ)にボタ餅(もち)コこさえで食うべどって居だがども、なんせ爺婆の貧乏所帯(びんぼうしょたい)だもんで、爺婆の分ばりしか無(ね)がったはで、なじょすんべって思案(しあん)したけド。


 ほんで、婆ァ、こっそら、
 「爺や、まんず寝ででござえ。夜ン間、ボタ餅コ出来(でげ)だらば爺ば呼ばっさえて。なス」
 って、語りコしたけド。すっと、爺ァ、
 「婆や、声コ出して呼ばってァ、座頭さまさ感づがって大事(おおごと)ら。ほんで俺の足さ細引き綱(つな)コ結い付けで置ぐはげ、ボタ餅コ出来たらぐぐっと引っぱって、教えろや」
 って、語りコしたけド。すっと、婆ァ、
 「ハァ、これらだば座頭さまさ見ねぐて、良(え)え案配(あんばい)だな。」
 って、爺の足コさ細引き付けたけド。爺ァ、
 「座頭さま、座頭さま、早よ寝んべァ、なス」
 って、爺ど座頭さまど二人ァ、寝だけド。

 
 夜ん間えなってがら、婆ァ、こっそらボタ餅こしゃえで、くっくっと細引きの綱コ引っ張ったら、こりゃ何としたごどが、爺ァンでねぐて、座頭さま引っ張らって来たけドヤ。婆ァ、
 「あじゃ、なじょすんべ」
 どて、あたらふたらしてるど、座頭さま、

 〽  餅つぐど 目にはさやかに見えねども、
   足の綱にぞ驚(おどろ)かされぬ

 って、歌コ詠(よ)んで、一人でボタ餅コみんな食ってすまったけド。

 ドンペ カラッコ ナエケド。

「座頭さまとボタ餅」のみんなの声

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