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ぶんぶくちゃがま
『文福茶釜』

― 群馬県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、あるところに爺さと婆さとふたりおって、貧乏暮らしをしとったと。
 あるとき、婆さが、
 「爺さんや、今日は少しぬくいから買物に行ってくれませんかのう」
と頼んだので、爺さは町へ買物にいったと。
 ところがお金をほんの少ししか持っていないのでたいした買物は出来んかったと。
 で、帰りにとぼら、とぼら林の中を通り抜けておると狸(たぬき)に出合ったと。
 「じいさん、じいさん、えらいしょぼくれとるなあ」
 「しょぼくれたくもなるわい。これから寒うなるっちゅうに金は無いし、困ったことじゃ」


 「ふんなら、おらが茶釜(ちゃがま)に化けてあげる、そいつをお寺の和尚(おしょう)さんに売りつけるといい」
 「ほお? そんなことが出けるんか」
 「出来るとも、三両には売れるさ」
 「ほうか、ほうか、そんならお願ぇするか」
 爺さと狸はお寺の前(まえ)までやって来た。
 すると狸は、くるっとひっくり返って、いい茶釜に化けたと。どこから見ても立派なもんだ。
 爺さは、そいつを風呂敷(ふろしき)に包んでお寺へ入って行った。

 「和尚さん、和尚さん、珍しいもんを手に入れましたんで持って来ました。金(きん)の茶釜でごぜえますだが、買(こ)おてもらえんじゃろか」
 和尚さんは手にとってながめまわし、指ではじいてみた。
 「いい鳴音(なりね)じゃぁ、これは大(たい)したもんじゃ、もろうとく、いくらじゃな」
 「へぇ三両では」
 和尚さんは、値うち物じゃぁ仕方なかろうと三両で買ってくれたと。


 「小僧や、小僧や、今晩はこの茶釜で茶をわかして飲むとしょう。よく磨(みが)いておきなさい」
 「へぇ」
 小僧は、いいつけどおりに、井戸端でゴシゴシたわしでこすっておったら、なんと茶釜がものを言ったと。
 「いてててててて。これ小僧や、そろそろ洗え。尻がはげる」
 小僧はびっくりして、和尚さんのところへとんで行った。
 「和尚さまぁ、茶釜がものを言ったぁ、『そろそろ洗え』って言ったぁ」
 「そうか、いい茶釜だからな、音が響いてそう聞こえるんじゃ。磨くのはもうそれくらいにして湯をわかせ」
 「へぇ」
 小僧が水を入れて竈(かまど)に掛け、火をたきつけると、
 「あちちちちい、これ小僧や、熱(あつ)いからちょろちょろたけ」
 小僧はまたまたびっくりして、和尚さんのところへとんでいった。

 
 「和尚さまぁ、こんどは『熱いから、ちょろちょろたけ』って言ったぁ」
 「そうか、値うちもんだからな、チンチンって音がそう聞こえるんじゃ。そろそろ湯を汲(く)むがいい」
 「へぇ」
 小僧が竈(かまど)へ戻ってみれば、茶釜から、みるみるうちに、足が出る、手が出る、尻尾がはえる。
 「和尚さまぁ、大変だぁ」
と呼んどるうちに本当(ほんと)の狸になって、ギャンギャン鳴いて、山へとんで逃げていったと。

 いちが ぽんとさけた。

「文福茶釜」のみんなの声

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驚き

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楽しい

私は、童話は、母親が子供の顔を見て話をするのが基本だと思います。 縫いぐるみを着たり、面を付けて話をすることは考えられません。 私の会社はクラシック音楽の番組を制作している会社です。 10年前から正当な日本語と子供のために0歳から15歳を対象に戦後、偉大な詩人、音楽家の作品を取り上げて2015から2019.02.23まで13公演を行い12000人の公演をしてまいりました、特別な今までどこも行わなかった手法でやってきたが、今コロナウィルスで年内全部のイベントを中止にしました。つくば国際音楽祭、管打楽器コンクール、世界子ども音楽祭、40年間子供のことを目指し45年間に世界的な音楽家や教育者等沢山育てました。是非とも企業の皆さんがご理解いただきます少子化する次世代を育成することをお願い致します。組織を構築し流暢に流れるのは30年かかります。宜しくお願い致します。( 80代以上 / 男性 )

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