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がんとりじっちゃ
『雁とり爺っちゃ』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 今村 泰子
整理・加筆 六渡 邦昭

 むがし むがし。
 あるところに、爺っちゃと婆っちゃと居てあったど。
 爺っちゃ 山さ柴刈(しばか)りに、婆っちゃ 川さ洗濯に行ったど。
 そしたら、川上(かわかみ)から箱っコ流れて来だど。
 婆っちゃ 拾って開けて見だらば、白い小犬っコ入っていだど。
 「ありゃあ めんこい犬だごど」
 ど言って、家さ帰(け)えって爺っちゃと相談して、飼うことにしだど。
 小犬っコ だんだん大きくなって、あるどき、爺っちゃ 山さ連れで行ったらば、犬、爺っちゃを引っ張って、ある所(どこ)の土をガサガサどひっ掻(か)くのだど。
 

 
 爺っちゃ 不思議なことだと思って、そこ掘っで見だらば、大っきな瓶出て来て、中さ一杯宝物入っていだど。
 爺っちゃ 喜んで、瓶持って帰(け)えったらば、隣りの爺っちゃ それ見でて、あくる日、
 「白い小犬っコ、貸してけれ」
 ど言って来だど。
 断(こと)わる事も出来ねぐて、貸してやったらば、隣の爺っちゃ、犬っコ連れで山さ行ったど。
 して、ガサガサっど犬がひっ掻く所掘って見だらば、瓶(かめ) 出て来だど。開けで見だらば、糞だの、瓦(かわら)のかけらだの、一杯入っていだど。
 隣りの爺っちゃ、怒って、犬を殺してしまったど。
 爺っちゃ それ聞いで、山さ行って、犬を埋(い)けで、そこさ松の木一本植えでおいだど。
 そしたら松の木、スック、スック伸びで、大きぐ大きぐなっだど。
 爺っちゃ、松の木切っで、木臼(きうす)こしらえて、それで籾(もみ)を碾(ひ)いだど。そしたら、米の替わりに宝物、一杯出はって来たど。


 隣りの爺っちゃ、それ見で、今度(こんだ)ぁ、
 「木臼 貸(か)しでけれ」
 ど言っで来だど。
 断ることも出来ねぐて貸してやっだど。
 隣りの爺っちゃ、それで籾を碾いだらば、糞だの、瓦のかけらだの一杯出はっで来だど。
 隣りの爺っちゃ、怒っで、怒っで、木臼をたたき割って、燃してしまっだど。
 爺っちゃ悲しぐて、その木臼の灰を貰って帰ったど。
 帰り道で、空に雁(がん)が飛んでいたので、雁さ灰をまいたらば、雁の眼(まなぐ)さ灰が入って、バタバタと落ちて来だど。
 爺っちゃ、喜んで、婆っちゃと雁汁こしらえて食ったど。
 隣りの爺っちゃ、ねたんで、かまどの下さ残った灰を集めて屋根へ上っだど。して、
 「我(わ)れも雁を落としてくれる」
 ど言って、空を渡る雁さ灰まいだど。
 そしたらば、雁の眼さ入らないで、自分の眼さ入って、目が見えなぐなってしまっだど。

 とっぴんぱらりのぷう。

「雁とり爺っちゃ」のみんなの声

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