― 新潟県佐渡 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志
むかし、あったけど。
狢(むじな)と狐(きつね)が、道でばったり会ったと。
「狐どん、狐どん、ひさしぶりじゃのう」
「これはこれは狢どん。本当にひさしぶりじゃ」
というているうちに、狐が、
「どうじゃ、狢どん。二人で化けくらべをしまいか」
というと、狢も、
「それはおもしろい。ひとつ、化けくらべをするか」
というた。それで、まずはじめに、狐がお宮さんの前で化けて見せることになった。
しばらくして、狢が約束のお宮さんの前に行くと、道の真中(まんなか)に、うまそうなまんじゅうが落ちている。
<これはうまそうなまんじゅうじゃわい>
と思うて、あたりをキョロキョロ見回し、誰(だれ)もいないと分かると、まんじゅうをさっと拾って、パクリと口の中に入れた。
そのとたん、
「痛(いた)い、 痛い 痛い 。狢どん、わしじゃ、わしじゃよ」
と、まんじゅうが口を聞いて、狐の姿(すがた)になった。狐が、まんじゅうに化けていたわけだ。
狢は、
「これはすまん。腹(はら)がへっていたから、ついつい食べてしもうた。それにしても上手に化けたなぁ」
と感心していた。そうしたら狐が、
「それじゃあ、この化けくらべはわしの勝ちじゃな」
「いいや、まだ分からん。明日、この道で大名(だいみょう)行列をして見せるから、うまくいったら手をたたいてはやしてくれ」
狢はそう言うと、帰って行った。
さて、次の日、狐は昨日の場所で狢の大名行列が来るのを、いまかいまかと待っていた。そうしたら、
「下にー、下にー、下にー、下にー」
と向こうから大名行列がやって来る。おともの侍(さむらい)も沢山いて、見るからに立派な行列だ。
狐は行列がそばに来ると、思わず道に飛び出して、
「うまい、うまい、よう化けたなあー、狢どん」
と、手をたたいてはやしたてた。
ところが、その行列は、本当のお殿(との)様の行列だったからたまらん。おともの侍がさっとやって来て、
「無礼(ぶれい)な狐め、エーイ」
と、きりかかった。やっと身をかわすと、ギャンギャンないて、山へ逃げていったと。
狢は、この日、本当の大名行列が通ることを前から知っていたんだとさ。
いきがぽぉんとさけた。
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むかし、あるところに爺(じい)さんと婆(ばあ)さんがくらしていた。 ある日のこと、婆さんが家の井戸端(いどばた)で畑から採(と)ってきた野菜を洗っていたら、男の人が垣根(かきね)の向こうから声をかけてきた。
むかし、農家では米俵(こめだわら)をあけて中の米をくみ出し、俵(たわら)の中の米が残り少のうなると、さかさまにして俵のまわりや底のところを棒(ぼう)で叩(たた)き、中の米を一粒(ひとつぶ)残さず出したそうな。
「ムジナとキツネの化けくらべ」のみんなの声
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