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じぶんのあたまをくったへび
『自分の頭を食った蛇』

― 鳥取県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、あるところに大分限者(おおぶげんしゃ)で、とても話の好きな婆(ば)さまが住んでおられたそうな。
 その隣には、彦八(ひこはち)といって、こちらは、めっぽう話上手(はなしじょうず)の貧乏男が住んでいたそうな。
 婆さまは、この男の姿を見かけるたびに、
 「彦八、話をしておくれや」
と、せがんでおった。
 

 
 あるとき、また、婆さまが話をせがむと、彦八は、
 「話してもええよ。話は話すけえども、わしの話に、いちいち、あんたが『そりゃあ嘘だ、そりゃあ嘘だ』っておっしゃっては、話してみたところで面白うない。あれをやめてくれたら、話しますだ」
と、こう言ったそうな。そしたら婆さまは、
 「いや、言わん。それは言わん。言わんつもりだけれども…。そうだ、こうしょう。ここに千両箱を置いといて、もしも、その言葉を言うたなら、千両をみなおまえにやってもええ」
と、約束した。


 そう言う事なら話してもええと、彦八は話しはじめた。
 「むかし、クチナワっていう蛇が、冬になると、餅石(もちいし)というものを持って穴ごもりをしとったが、冬が長(なご)うて、餅石は食べてなくなってしもた。穴の口からのぞいて見ても、雪が、たんと積もっておって出ることならん。
 いつもの年なら、餅石がなくなる頃には雪が消えるものなのだが、その年に限って雪は消えん。 クチナワは、腹は減るし、困っておった。しかたないから、首をクリッとまわして、自分の尻尾をチョキッと食った。

 
  翌日も雪がまだまだある。腹が減ってしかたないから、また、首をクリッとまわして、自分の尻尾をチョキッと食った。
 こうして、とうとう首だけになったそうだ」
 彦八が、いったん、話をここで止めると、婆さまは、口(くち)をもごもごしとる。


 そんな婆さまをチラッと見た彦八は話を続けた。
 「クチナワの頭は、『おらの身体も、いよいよ淋しいことになったもんだ』ちゅうて、なげいとったけど、なんと、自分の頭まで、スポ-ンと、食ってしまったそうでござんすわい」
と、話したから、婆さまはあきれかえって、思わず言うてしまった。
 「何んと彦八、そりゃあ嘘ではないかや」
 「はい、ありがとうござんす」 

 彦八は、まってましたとばかりに、千両箱をかついで、とっとと去ったそうな。

 昔こっぽり
 

「自分の頭を食った蛇」のみんなの声

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