母親から未だくだしょうを飼っている家があると聞き検索したら、お話しが出て来て驚きました。( 50代 )
― 長野県飯田市 ―
資料 文献資料
語り 井上 瑤
昔、ご飯をよそったときに、しゃくしでおひつのふちを絶対にたたくものではないと言われました。
それは行儀(ぎょうぎ)が悪いからというだけでなく、”くだしょう”がやってくるという大きな理由があったからです。
くだしょうとは、寝たきりの病人などにとりつく狐(きつね)のことで、人間の身体(からだ)を自由に出入りし、外に出てはいたずらをして歩き、またとりついた人の身体の中に戻ってくるという、目には見えない恐ろしい化け物のことです。
挿絵:福本隆男
ある寝たきりのおじいさんにとりついた”くだしょう”は、こんなことを言ったそうです。
「今、Aさんの家に寄ったらB子ちゃんが寝とったもんで、胸元に乗って騒いできた。そうしたら、B子ちゃんがひいひい言って苦しがって面白(おもしろ)かった。あんまり面白かったもんで、ちょっと口をふさいでやったら息をしんようになったんだに」
と。
幼くして死んでしまった子は、くだしょうがきて騒いで行ったから亡くなったんだと言われたそうです。
ここからは私が母から聞いた本当にあった話です。
母が小さかった頃(ころ)、寝たきりのひいお婆(ばあ)さんがいたそうです。ひいお婆さんが、妙なことを口走るようになったある日、
「今日はなぁ、Cさんの家へ寄ったら、丁度(ちょうど)ぼた餅(もち)を作っておったんで、ひとつ頂戴(ちょうだい)してきたが、おいしかったなぁ」
といいだしたそうです。
家の人は、ひいお婆さんは外を出歩けないのに、変なことをいうなぁ、と思って、Cさんに、
「うちのひいお婆さんな、寝たきりなのはあんた識(し)っとろう。それなのに、あんたのところへ立ち寄ってぼた餅ひとつおよばれしておいしかったなぁ、っていうんだに」
と、話したら、Cさんは、
「あら、まあ、やーだよー。うちじゃぼた餅を作って食べたんだに。来もせんあんたのとこのひいお婆さん、なんで知ってんのー」
と驚(おどろ)いていたそうです。
家の者(もの)は、もしかしたら、と心配して、ししょう様と呼ばれる、くだしょうをおはらいする人を呼んだそうです。
ししょう様は、へいそくを持ってやって来て、ひいお婆さんの身体を、そのへいそくでおはらいをしだしました。
そのうちにくだしょうは、ひいお婆さんの身体を離(はな)れて、ししょう様の身体に乗り移りました。
挿絵:福本隆男
すると、ししょう様は、裸足(すあし)で外に飛び出してゆき、持っていたへいそくを遠くに投げたそうです。
そのへいそくとともに、くだしょうはとりついた人の身体を離(はな)れて行くのだそうです。
こうして、ひいお婆さんの身体からくだしょうは追い払われました。
しかし、安心はできません。一度おはらいしてもらって、くだしょうを追い出しても、またその人にとりつくことがあるからです。
くだしょうがとりついたまま死んでしまった人は、そのとりついていた部分だけがいつまでも温かいといいます。
何年かして、ひいお婆さんが亡くなったとき、右肩の下あたりが、いつまでも、いつまでも温かかったそうです。
そればっかし。
母親から未だくだしょうを飼っている家があると聞き検索したら、お話しが出て来て驚きました。( 50代 )
話を聞いていて短い文だったけどいろんなものが想像できるなと感じました。 昔の人たちはどこからこういうような民話を聞いたのか疑問に思いました。( 10代 )
目に見えないものが取り付いているかもしれないんだね。お祓いしてもらうことも大事だね。怖かったです。( 50代 / 女性 )
むかし、むかし、ある山里に貧乏なお寺があって、和尚(おしょう)さんが一人住んであった。 その寺へ、毎晩のように狸(たぬき)が遊びに来て、すっかり和尚さんになついていたと。
「くだしょうの話」のみんなの声
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