― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、ある所に大猫(おおねこ)と小猫(こねこ)がおったそうな。
ある日のこと、この二匹(にひき)の猫が揃(そろ)って歩いて行くと道端(みちばた)におむすびが二つ落(お)ちていた。小猫の拾(ひろ)ったのは大層(たいそう)大きく、大猫の拾ったのはごく小さいものであったそうな。
そこで大猫は小猫に向(む)かって、
「お前はからだが小さいから、おむすびも小さいので良(よ)い。その大きなのをおれにくれ。そのかわりに、これをお前にやるから」
と言って、小さいおむすびを差(さ)し出した。
「いやな事よ。あなたはもう大きいから、小さいので良い。私はまだ太(ふと)らねばなりませんから大きなものを食べます」
と言って、大きなのを渡(わた)さない。
「なあ、替(か)えようよ」
「いやです」
「渡せ」
「いやよ」
二匹の猫は喧嘩(けんか)をはじめたが、いつまでたっても互(たが)いに譲(ゆず)らない。
そこで、猿(さる)さんのところへ行って聞いてもらおうということになり、猿に頼(たの)んだそうな。猿は快(こころよ)く聞き、すぐ手秤(はかり)を持(も)って来て、二つのおむすびを計(はか)り始めた。
ところが、こちらが重(おも)いといって大きいのを一口食い、食い過(す)ぎたといって小さい方を一口食い、とうとう二つのおむずびを全部(せんぶ)食うて終(しま)った。
二匹の猫は二つとも猿に食われて終い、泣(な)く泣く帰(かえ)ったそうな。
それっきり。
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むがし、あるところにひとりの若者があって、長いこと雄猫(おすねこ)を飼(か)っていたと。 そうしたところが、この猫がいつもいつも夜遊びをするので、あるとき、若者は猫のあとをつけてみたと。
「猿の仲裁」のみんなの声
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