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ふくろうのそめものや
『梟の染物屋』

― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、むかしの大むかし。フクロウは染物屋だったと。
 店は、たいした宣伝もせんのに、えらくはんじょうしたそうな。
 朝はまだ日の出んうちから、色んな鳥がやって来て、思い思いの色や模様に染めてもらっては、得意がっておった。
 それを聞いたカラスは、
 「そんなに評判の染物屋なら、ひとつ、わしもお願いしてみるか」
というて、やって来たと。
 カラスは、その頃はまだ真っ白い身体(からだ)をしておったそうな。


 「フクロウどん、わしの羽をいい模様に染めてくれや」 
 「いいとも、いいとも。わしの腕によりをかけてやってみんべえさ だども、カラスどんよ、しばらくの間動いちゃぁなりませんぞ。
 動くと模様がうまく描(か)けませんでのう」
 フクロウは筆に墨(すみ)をどっぶりとふくますと何やら模様を描きはじめた。
 ところが、カラスはくすぐったくてたまらん。
 フクロウが筆を動かすたびに、身体をよじる。 

 「カラスどん、あれだけ言うたのに、なぜ動くんじゃ。ほれ見なされ、失敗したでねえか。えい、いっそ、こうしてやる」
 フクロウはカラスを真っ黒に染めてしまったと。
 店先にいた他の鳥たちは、真っ黒になったカラスを見て、笑って馬鹿にしたそうな。


 カラスは、
 「このフクロウの阿呆たれめ、腹が立ってならん」
と怒ったが、どもならん。それからというもの、カラスは、毎日フクロウの店にいっては、
 「もとの白い羽返せ」
と声高(こわだか)にさけぶんだと。
 フクロウはカラスが恐くてならん。カラスの出歩く昼間は、ボロ手拭でほおっかぶりをして、木の穴の中でじいっとうずくまっているようになったと。
 フクロウは夜になると、「ノリツケホッホ、ノリツケホッホ」って、一声ずつくぎって低い声で喘ぐけれど、あれは、カラスが目をさまさないようにしているんだと。

 そればっかり。

「梟の染物屋」のみんなの声

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驚き

フクロウの生態をうまく利用しており昔の人の観察力に頭が下がります。( 70代 / 男性 )

驚き

カラスが白い時期があったなんて驚き( 10代 / 男性 )

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