民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 人まねの失敗にまつわる昔話
  3. 腰折れ雀

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

こしおれすずめ
『腰折れ雀』

― 岐阜県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、あるところに、とても優しいお婆さんがおったと。
 ある日のこと、お婆さんが庭に出てみると雀(すずめ)が一羽、飛び立つことが出来ないでバタバタしとる。そおっと近づいて手にとってみると、雀の尾っぽ羽が折れとるんだと。
 「おお、おお、可哀そうに」
 お婆さんは、雀の尾っぽ羽に薬をぬり、小んまい添え木を当ててやったと。籠(かご)の中に入れて、水をやったり米を食わしたり、まめまめ世話したと。
 だんだん雀は元気になり、そのうち、すっかり治ったと。
 お婆さんは、ぽかぽかした日に雀を籠から出し  
 「けがが治って良かったなぁ、さあ早よ、お父っつぁんとお母っつぁんのところへ飛んで行き」
 ちゅうて、放してやったと。


 雀は、ちょっとの間(ま)バタバタしとったが、すぐにどこかへ飛んで行ったと。
 
 ひと月ほどたってから、お婆さんの家の庭にいつかの雀が来て、チュン、チュンとしきりに呼ぶそうな。
 「おお、また訪ねてくれたかいや」
と、お婆さんが庭に出ると、
 「この間は、大けがをしているところを助けて下さいましてありがとうございました。今日は、お礼に来ました」
 ちゅうて、お婆さんの前に、何か種のようなものを一粒ほろんと落としてくれたと。
 「あれまあ、それはそれは、ありがとう」
 お婆さんが庭に蒔(ま)いておいたら、それが芽を出して、すんすん伸びて、葉は茂るし、花も咲いて、たくさんの実がなった。見事なひょうたんだったと。取り切れんほどだったと。
 「こりゃ、すごい、近所にも分けちゃろ」
 ちゅうて、配った残りを、五つ六つ、倉の中にぶら下げておいたんだと。 

 
 秋になって、よく熟(う)れて皮が堅(かた)なってから下そうとしたら、そのひょうたんがズッシリ重いんだと。抱(かか)えきれんから縄(なわ)を切って落としたと。
 不思議に思って、ひょうたんのヘタを切って中を覗(のぞ)いて見ると、中には、真白い米がいっぱい入っておったと。
 「これもじゃぁ、これもじゃ」
 米は、食べても食べても尽きないのだと。
 お婆さんは、米を売って、毎日、花を作ったり、子供に話を聞かせたりして、一生安楽に暮らしたと。

 しゃみしゃっきり。

「腰折れ雀」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

十六人谷(じゅうろくにんだに)

むかし、越中、今の富山県の山奥の谷で、十六人のきこりと一人の飯たきの爺さまが仕事をしていた。毎日、毎日、斧をふるう音がコーン、コーンと谷じゅうに木魂した。

この昔話を聴く

抜け出した魂(ぬけだしたたましい)

ちょっと昔の話。高知県香南市夜須町(こうちけんこうなんしやすちょう)の弥作(やさく)さんというお人が高知へ行って、帰ってくるとき、むかしは歩きよりましたろう。ほんで、家に帰り着いたのが夜中時分じゃったそうな。

この昔話を聴く

鬼婆と臍玉(おにばばとへちょだま)

昔、あるどごに父(おど)と母(おが)と娘と暮(く)らしてあったと。父と母ど松前(まつまえ)さ、働ぎに行ったど。娘、一人で家にいだど。娘ァ父と母と帰るまでに、麻糸(からむし)の糸玉ばこさいでおぐべど思って、夜おそくまでせっせど働いでいだど。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!