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おしょうとばくちこぎ
『和尚と博打こぎ』

― 秋田県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤

 むかし、ある所に和尚(おしょう)さんと小坊(こぼう)っこと二人暮らしてあったと。
 その村に、三助ていう博打(ばくち)こぎいたと。毎日毎日博打こいで、デロッと負けてしまって、家の物なもかも質(しち)に置いて、売る物なくなってしまったと。仕方ねぐ、ぼろ集めて、小包こしらえて、お寺さ行ったと。


 寺の和尚さん、物好きな人であったと。三助、和尚さんさ、
 「これ、親から譲(ゆず)られた『ちょろっぴー』ていう物で、和尚さんでねぇば分からねぇもんだ。これで和尚さん、少し銭コ貸(か)してけれ」
とて、和尚さんから、銭コ借(か)りて、三助、また博打こぎに行ったわけだ。
 
和尚と博打こぎ挿絵:福本隆男


 それから何日経っても、三助、その『ちょろっぴー』を取りに来ない。和尚さん、
 「三助ぁ、あの包見るなて言ったども、宝物だなんて言ったども」
と、つぶやいてたきゃ、見たくなって、開いて見た。したきゃ、大変なぼろであった。


 和尚さん、今度ぁ小坊こさ、
 「おれ、馬鹿(ばか)の振(ふ)りするから、お前あとからついてこい」
て、いったと。して、村の中さ、
 「親の譲りの『ちょろっぴー』なくした。なんとしよう。小坊コ」
て、うたって歩くと、小坊コ、
 「三助来たらば、いい訳(わけ)してあげましょ」
と言って回って歩いたと。
 このこと、三助の耳にも聞こえた。


 「これだば、もっけのさいわい。吹っかけて、銭コいっぺせしめちゃろ。しめしめ」
て、和尚さんから借りた銭コ、なんとか都合して、お寺さ言った。して、和尚さんに、
 「お借りした銭コ、お返しに来た。ちょろっぴー、返してくなんせ」
て、言ったど。和尚さん、銭コ受けとって、
 「おやぁ、あれ見ねぐしたデァ。困ったなぁ」
て、言ったど。したら、三助、
 「あやぁ、親の譲りだもの、見ぇなぐなれば大変だ。探して呉(く)なんせ」
て言って、いけしゃあしゃあと困った顔した。
 和尚さん、見つける振りして、ぼろの入った包を持って来た。


 「あったあった。親の譲りの『ちょろっぴー』とかゆうたったの。いや、よかった、よかった」
て、いうて渡(わた)してやったきゃ、三助、それたがえて戻って行ったと。
 
和尚と博打こぎ挿絵:福本隆男
 
 とっぴん ぱらりのぴ。

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