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うしとかえる
『牛と蛙』

― 山梨県 ―
語り 井上 瑤
再話 土橋 里木
整理・加筆 六渡 邦昭

 むかし、あるところに蛙(かえる)の親子が暮(く)らしておった。
 ある日、子蛙が川っ端(ぱた)へ遊びに行ったら、一匹(いっぴき)の牛が草を食(は)んでいるのに行き逢(あ)った。
 子蛙は生まれてから、まだ牛を見たことがなかったから、びっくりして、あわてて家に帰ったと。そして、
 「お母、お母、おらァ今、とてもでっかいもんに行き逢った」
と言って、親蛙にそのことを話した。
 
親蛙が、
 「そりゃ一体なんだぁ」
ときくと、子蛙は、
 「お母も識(し)らんのかぁ、なんだか知らんけんど、とてもでっかい物(もん)だぁ」
というた。親蛙は、


 「そんなでっかい物は、やたら世の中にあるもんじゃない。お母だって、かなりでっかい方だぞ。どうだ、それァ、この位もでっかかったか」
と言いながら、自分の腹(はら)をウンと膨(ふく)らませて見せた。

 それを見た子蛙は、
 「ウーン、まっと、まっとでっかかった」
と言った。親蛙は、
 「そんじゃ、この位か」
と言いながら、また、グーンと腹を膨らませた。
 子蛙は、
 「とてもとても、もっともっと、山のようにでっかいもんだった」
と言うた。
 
 親蛙はくやしくなったと。どうしてもそのでっかいもんに負けたくなくなった。
 「どうだ、この位か」
 「まっと、まっと」
 「そんなら、この位か」
 「いんや、まっと、まっと」
 「うーん、そんじゃ、この位か」 

 
 このくらいか、このくらいか、といいながらウンッと力んで腹を膨らませているうちに、とうとう、腹の皮がパチンと破裂(はれつ)してしもうたと。
 
 いっちんさけえ。

「牛と蛙」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

怖い

膨らみすぎると破裂すること、牛のように大きくはなれないことを子蛙が知らなかったとしても結末が怖い。お腹いっぱいで破裂しそうと言った私に、おじいちゃんが教えてくれたのが「牛と蛙」。怖いって。( 10代 / 女性 )

悲しい

無理はしちゃいけないってことですね・・( 10歳未満 / 女性 )

怖い

カエルには牛の大きさに追いつけるはずないですよ! カエルがみっともないだけですね( 10歳未満 / 女性 )

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驚き

はれつしてびっくりした

悲しい

親のお腹が破裂して死んじゃうなんて悲しい。( 10歳未満 / 男性 )

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