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へっぴりじい
『屁っぴり爺』

― 秋田県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むがしあったぞん。
 あるところに善(よ)い爺(じい)ちゃと、婆(ばあ)ちゃといてあった。その隣にはひどく性骨(しょうぼね)の悪い爺と婆がいた。
 ある日、善い爺ちゃが山へ行って、ダンキダンキと柴(しば)を刈(か)っていたら、
 「誰(だれ)だ、長者殿の山の柴刈る奴(やつ)は」
と叫(さか)ぶ者がある。そこで、
 「山々(やまやま)の屁(へ)っぴり爺だ」
と答えたら、
 「そんならここへ来て、屁たれろ」
と言う。爺ちゃ、そこへ行き、

 
 〽 綾(あや)キュキュ 錦(にしき)サラサラ
    五葉(ごよ)の松原(まつばら)
    トンピンパラリのプウ
と、屁、こいた。そしたら、「また一つ」と所望(しょもう)されたので、もう一回、
 〽 綾キュキュ 錦サラサラ 五葉の松原
    トンピンパラリのプウ
と、屁、こいてやったと。
 
屁っぴり爺挿絵:福本隆男

 
 そしたら、
 「やあ、みごと、みごと。こたら爺ちゃだら柴刈っていい。ほうびもやる。ここに重い葛籠(つづら)と軽い葛籠とあるが、どっちが欲しい」
と聞いた。爺ちゃ、正直(しょうじき)だから、
 「俺(おれ)だば年寄(としよ)って腰(こし)も痛いから、軽い方どて貰(もら)う」
とて、背負(しょ)って来た。
 家に帰って葛籠を開けてみたら、新しい腰巻(こしまき)に褌(ふんどし)、きれいな着物(べべ)から銭金(ぜんこ)が一杯(いっぱい)入っていたので、にわかに大金持ちになったと。
 それを聞いた隣の性悪婆(しょうわるばあ)、片足(かたあし)に草履(ぞうり)、片足に下駄(げた)をつっかけて、柱に頭を打(う)ちつけたり、小便壺(しょんべんつぼ)に片脚(かたあし)を落したりの大狼狽(おおうろだえ)で帰って行って、爺どこやまへやったと。


 性悪爺(しょうわるじい)、やっぱりダンキダンキと柴を刈っていると、
 「誰だぁ、長者殿の山の芝刈るやつ」
どて、とがめるから、
 「山々の屁っぴり爺だ」
と答えたら、
 「そんならひとつたれろ」
と言う。性悪爺、着物の尻(けつ)っこまくって、
 〽 綾キュキュ 錦サラサラ 五葉の松原
    トンピンパラリのブウッ
とやったら、あんまり気張(きば)り過ぎて、ベチョ糞(ぐそ)がベタベタと出た。
 「あやあや汚(きた)ならし」
と言われて、
 「あ、いや、今のは屁ならしで、これからが本こだ」
と言うて、気張ってやったら、またベチョ糞が出た。


 それでも葛籠を二つ出して、どれでも持って行けというから、性悪爺、
 「俺だば力があるから」
どて、重い方を背負って来た。
 家に帰って、葛籠を開けて見たら、中は蜘蛛(くも)の巣だらけで、怖(おそ)ろしい化物(ばけもの)がぞろぞろ出て来た。性悪爺と婆、魂消(たまげ)て死んでしまったと。

 にしきさらさら ごよのまつばら とっぴんぱらりのぷ。

「屁っぴり爺」のみんなの声

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