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ぞうにもちのはじまり
『雑煮餅のはじまり』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
話者 佐藤 孝一
再話 武田 正
整理 六渡 邦昭

 弘安(こうあん)四年、西暦(せいれき)では一二八一年、今からおよそ七〇〇年以上もの昔、九州の福岡県の博多(はかた)あたりの浜辺(はまべ)へ、海をへだてた隣(となり)の国、元(げん)の軍隊がたくさんの軍船に乗ってせめ寄ってきた。

 元軍の戦い方は何人もの兵隊が共同して戦う。それに対して、日本軍(にっぽんぐん)の戦ぶりは「われこそは」と名乗って、一人で行った。いくら強くても、一人対多勢(おおぜい)ではかなわない。さんざんに負けた。もう全滅かというときになって、台風がこのあたりを襲(おそ)った。元軍は何百何千艘(そう)もの船をもやいて、我(われ)先に帰ろうとした。

 
 ところがあまりにも船がたくさんで、あっちでぶつかり、こっちでぶつかり、大波をかぶってひっくり帰ったりで、元軍の方が全滅(めつ)したと。何とか元に帰れたのは、たった数人だったと。日本の戦人(いくさびと)たちは、神風が吹(ふ)いたというて喜んだ。

 だが、次に攻(せ)めてくるときには、虎(とら)を連れてくるぞ。虎というのは人間をひとかみだ。それから大砲(たいほう)というものを積んでくるぞ。大砲もまた人間を幾人(いくにん)となく吹っとばす。
 どうしたらいいか、みんなで考えた。そしたら頭のいい人が、
 「日本国中の撞鐘(つりがね)を全部向うさ向けろ。そうすると、元軍は船の上から遠眼鏡(とおめがね)で見て、『これぁ、日本にもすごい大砲がある』と、こういう風に見えるだろう」
というた。


 大砲の問題はまずこれでよろしい、ということになった。
 次に、虎をいっぱい連れてきて、あばれられたら困(こま)る。ところかまわず喰(く)い散らかされたのでは何とも仕様がない。虎より荒(あら)い動物がどこかにいねえもんか、とみんなで相談した。そしたら頭のいい人が、
 「いた」
 「何だ」
 「象だ。象には虎もかなわない」
 「象っていうの、どんなもんだ」
 「そこまでは識(し)らん」
というた。

 象を見たことある人が誰(だれ)もいなかった。で、はるばる京へのぼって、印度から来たバラモン僧(そう)に象というものを教わった。


 「足は丸太ん棒(ぼう)立てたようだ。耳は百姓(ひゃくしょう)の箕(みの)のようだ。でっかくて、バサバサって動く。鼻はずっと長くて、頭はこんな具合で、背中(せなか)はこうだ」
と、教えられた。絵に画(か)いて持ち帰ったと。
 「そうか象とはこんなもんか。よし、じゃあこいつは何で作ったらええか」
 「足は丸太でいいとして、他のところはどうする」
 「よし、ええことある。餅(もち)米をたくさん集めて、餅でこしらえたらええがんべ」
 「ええがんべ」
ということになって、餅で作った象を何十体もタタラ浜へ並(なら)べ立てた。
 ところが待てども待てども、元軍は攻めて来なかったと。

 象はからからに乾(かわ)いてひび割(わ)れてきた。おまけにカビがはえてきた。
 「元軍も攻めてこないようだし、象をこのまま腐(くさ)らかすのももったいないし、どうするか」
って、また皆(みな)して相談したと。


 頭のいい人がいて、
 「ぶったたいて、食ったらいい」
というた。 
 それがいいということになって、大勢の兵士で象をこわしては食い、こわしては食いしたと。このとき、野菜とか、肉とか、魚とか、なんでもかんでも雑多(ざった)に入れて喰ったら、とてもうまかったと。
 これが雑煮(ぞうに)餅のはじまりだと。
 
 とっぴんからりんねけど。

「雑煮餅のはじまり」のみんなの声

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驚き

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