民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 草木の話・動物の由来にまつわる昔話
  3. 雉になった娘

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

きじになったむすめ
『雉になった娘』

― 山形県 ―
語り 井上 瑤
再話 佐藤 義則
整理・加筆 六渡 邦昭

 昔々(むかしむかし)。
 一人の美しい娘持った婆(ばあ)さまあったけド。
 あるとき、村の殿(との)さまァお通りになって、ほの娘ば見染(みそ)め、
 「どうぞして、奥方(おくがた)にしたいから呉(け)ろ」
 って、言って来たけド。婆さま良(え)え気して、
 「ハァ殿さまの奥方になるざァ、願ってもない事でな」
 って喜んでだら、すぐに、でっすらど嫁入り仕度(よめいりしたく)寄ごしたけド。


 婆さまと娘、浮(う)き浮きしてっと、隣(とな)りの国の殿さまも聞きつげで、 
 「どうが、俺(おれ)さ、その娘ば呉ろ」
 って、こっちも負げねで、でっつらたんと金銀綾錦(きんぎんあやにしき)たがって来たけド。
 こいづァこでえらんねェ。婆さま、欲(よく)強ぐして、どっつさも良え返答したっけドャ。 
 つっと、両方(りょうほう)の殿さま、待て暫(しばし)がねぐなって、
 「早よ娘ば呉ろやえ」
 って、催促(さいそく)に来たけド。
 動転(どで)した婆さま、とっさな事で娘ば隠すのにまごついですまてハア、娘を土間(どま)さ屈(しゃご)ませて莚(むしろ)かぶせで、
 「娘ァ、今日ァ町ィ買出すさ行ったった」
 って、嘘(うそ)っコついだど。二人の殿さま、
 「んだら、戻って来るまで待っで、どっちさ嫁(とつ)ぐか、決めんべァ」
 どて、にらめっこしてだげんど、娘ァなかなか来ねけド。


 ほのうち、土間の莚、ガサゴソ動いだけド。
 二人の殿さま、
 「ハテ、婆家(ばあえ)の莚ァひとりで動ぐでァ。なじょした事だ」
 って、聞ぎたださったけド。
 婆さまァびっくらして、
 「ハァ、これァ、今朝山がら捕(と)っつかめできた雉(きじ)コば包(くる)んでるならざェ」
 って、嘘っコこいだけド。二人の殿さま、
 「そうか」
 って、言ったけド。

 ほのうち夜になって、
 「娘ァ戻って来ねな、仕方ねっちゃ」
 って、待ちきらねで、殿さまら帰って行ったけド。
 婆さま、やれやれっで、土間さへたりこんで、
 「娘コや、早よ出でござえ」
 って呼ばったが、ハテ、何の返答(へんとう)もねえ。なじょした事だかどて、莚ば剥(は)いでみっと、娘は居ねで、一羽の雉コ居るばりだけド。


 婆さま、おったまげでっと、雉コァ、
 「あんまり欲濃ぐした罰当たったざェ」
 って、泣ぎ泣ぎ、山さ飛んでったけド。
 ほんで、雉コ、神さまがら、
 「三万三千年の内、人さ良い事(ごと)して呉ったらば、人さ戻してける」
 って教えらったさえ、地震(じしん)や雷(かみなり)さまの来るどきァ、
 「気ィつけろォ、ケンケン
 気ィつけろォ、ケンケン」
 って、叫んで歩いで、
 「人ァ羨(けんな)りええ、けんなりええ」
 人がうらやましいって、こぼすんだド。

 どんびん。

「雉になった娘」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

蜘蛛の恩返し(くものおんがえし)

 昔、あるところにひとりの兄さまがあったと。  ある晩げ、天井から一匹の蜘蛛がおりてきた。  夜、蜘蛛が家に入ってくるのは縁起が悪いといわれているので、兄さまは、  「クモ、クモ、今晩何しておりてきた」 といって、蜘蛛を囲炉裏の火にくべようとした。そしたら蜘蛛が、  「兄さま、どうか助けで呉」 というた。

この昔話を聴く

駄賃付と疫病神(だちんづけとやくびょうがみ)

 昔々、あったず。  あるところに、とても貧乏(びんぼう)で、その日暮らししている駄賃付(だちんづけ)があったと。

この昔話を聴く

河童岩(かっぱいわ)

むかし、ある川の中に一ぴきの河童が棲んでいたと。ある時、子供達が大勢集まって、川の中に白い小石を投げ込んでその小石を取りあいっこしては遊んでいた。す…

この昔話を聴く

現在881話掲載中!