― 富山県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、むかし。あるところにひとりの木挽(こびき)がおったと。
ある日のこと、その木挽が山に入って、
「さあ、今日はこの木を伐(き)ろうかな」
と独り言をいって、木の前にゴザを敷(し)き、腰(こし)をおろした。
すると、どこやらから人の声がかすかに聞こえてきた。空耳(そらみみ)かなと思ったが、じいっと耳をすましていると、声は自分の足のあたりから聞こえてくるようだ。その声は、
「この木、伐ってくれるな」
といっているようだ。
妙なこともあるもんだと思って、足の下をよくよく見ると、木の根っこのすき間から、何やら、ヒョコッ、ヒョコッと出て、もの言うた。
「これは俺たちの木だから、伐らんと残しといてくれ」
「こりゃ、まあ、なんと。小んまいお人たちがいたもんじゃぁ」
「そんなに大きい声出すな。耳がこわれる」
「おっ、そうか。済まんじゃった。んじゃぁ、こんなもんでいいか。ン。そうか。この木はお前たちの住み家(すみか)じゃったか。わかった」
木挽はその木を伐らずに、その日は山から帰ったと。
それから何日かして、木挽はまた山に入った。
小人の住む木のところへ行って、どの木を伐ったらいいか聞いたと。そしたら小人は、あの木を伐れと、指さした。太っとい大きい木だったと。
そこへ行って伐って伐って伐っていたら疲れた。で、ゴザを敷いてひと休みしていたら足元で、何やらカサコソする。蟻(あり)かな、と思うてよおっく見たら、先程の小人だ。それがしきりに、
「あっち行け、あっち行け」
といっている。
「急げ、急げ」
と、せかされて、木挽は何が何だか分からなかったが、とにかく、でっかいのこぎりをかついで、小人の指さす方へ急いで行った。木の高さ二本分ぐらいも行っただろうか。背中の方で突然、バリバリ、ドォーッと大きな音がした。驚いて振り返って見ると、今まで伐りかけていた木が倒れたのだった。
「やあ、あのまま休んでいたら危ないところじゃった。やれ命拾うた」
と胸をなでおろして、ふと、小人は大丈夫だったじゃろうかと心配になって見まわすと、小人は倒れた木の上に立っておった。
どうも木挽を呼んでいるようだ。
行ってみたら、小人は、倒れた木の根っこを指さしている。
何と、木の根元の掘れたところに、大判小判がぎっしりと埋まっていた。
木挽が驚(おどろ)いて、目をパチクリしていると、小人はそれをみんな持って行けというた。
木挽は、いっぺんに金持ちになって、一生安楽に暮らしたと。
これでぱっちり柿の種。
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むかし、むかし、あるところに歌の三郎と笛の三郎という若者が隣合って住んでいた。歌の三郎は歌が上手で、笛の三郎は横笛が上手だった。二人は、もっと広い世界で芸を試してみたくなった。歌試し、笛試しの旅へ連れだって出かけたと。
「木挽きと小人」のみんなの声
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