民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 大きな話・法螺話にまつわる昔話
  3. 屁一つで村中全滅

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

へひとつでむらじゅうぜんめつ
『屁一つで村中全滅』

― 栃木県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、ある村に屁っぴりの娘がおったそうな。
 あんまりひっきりなしに屁をこくので、めったに外へ出ることはなかったと。
 「この娘(こ)は、一生嫁に行けないのでは」
と、ふた親の心配は日毎(ひごと)に増すばかり。
 ところが、ある日、思いがけず隣り村(となりむら)の分限者(ぶげんしゃ)から、息子の嫁にもらいたいとの話があったと。
 ふた親は、恥をしのんで分限者に打ちあけたと。
 「この娘は、腹に少々故障(こしょう)がありまして」
 「ほう、といわれると」
 「はあ、あのう・・・、オナラを・・・するのです」 


 「何と、オナラですと。そんなもの誰でもしますがな。私なんぞ、日に五、六回はしますな。それとも何ですか、オナラに事(こと)かけて私共とのこの縁談、断るとでも・・・」
 「あ、いえ めっそうもない。本来なら、願ってもない良い縁談と思うとりますが、何分、そのう・・・」
 「本来も何もありません。願ってもないといわれるのなら、是非ご承諾ください」

 これこの通りと、分限者に頭を下げられたふた親は、
 「オナラさえご承知して下さるのなら」
 「承知」
と、分限者がポンと手を打って、この縁談まとまったと。


 いよいよ嫁入りという時になって、母親は娘を呼んで、
 「あちらさまは、ああ言って下さったが、お前のは並(なみ)の屁っぴりではありません。嫁に行ったら充分気をつけて、決して粗忽(そこつ)なことをしてはいけません」
と言って聞かせたと。


 祝言も無事済んで、三日たち、四日たち、七日も過ぎると、我慢に我慢を重ねたせいで腹がキリキリ、キリキリ、痛とうてかなわんのだと。
 かがんたひょうしに、思わず、ブファ―と一(ひと)つ、やってしもうた。 
 娘は、くれぐれも母親に言われたのにと思うと、
 「今のはきっと聞かれたに違いない。この先追い出されでもしたら、ふた親に顔向け出来ない」
と思いつめて、とうとう、村の大きな池に身を投げて死んでしもうたと。
 すると、聟殿は、
 「屁ひとつぐらいで、あんないい嫁を殺してしまって、先方に申し訳ない。自分も後を追って死んでしまおう」
と、やはり池に飛び込んで死んでしもうた。


 そしたら、嫁と息子に死なれた分限者夫婦は、
 「この先頼りにする者たちに死なれて、何でこの世に楽しみがあろう」
と、また続いで池に入って死んでしもうた。

 そしたら何と、
 「村の親ともいうべき分限者が死んでしまっては、この村にいても暮(く)らしようがない」
というて、村の人々は次々と皆んな池の中に飛び込んで死んでしもうたと。
 村にはだあれもいなくなったと。

 おしまい ちゃんちゃん。 

「屁一つで村中全滅」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

驚き

私も生粋の屁こきですが、溜めてしまうことで思わぬ災害に繋がることを痛感しました。。。 これからも小出しに屁こいていこうと思います。非常に学びのあるお話でした。( 20代 / 男性 )

楽しい

とても楽しくでも深いお話でした( 10代 / 男性 )

悲しい

屁が招く不幸なお話でした・・最後は悲しいですが、語り手さんの声がとても聴きやすく、味わいがあってよかったです。

もっと表示する
怖い

悲しい死の連鎖…最後が衝撃的で怖かったです!( 30代 / 女性 )

楽しい

そんなにおなら臭いのWWWWWWWW〜( 男性 )

驚き

屁の音でかっWWWWWWW( 80代以上 )

楽しい

何でそんなに怖がるの?( 10代 / 女性 )

楽しい

少し悲しかったけど面白いお話でした( 10代 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

正月神様(しょうがつかみさま)

むかし、あるところに爺さと婆さがおって正月神様がおかえりになる日に雨がドシャドシャ降ったと。爺さと婆さがお茶をのみながら、「この雨はやみそうにもない…

この昔話を聴く

谷峠の猫又(たにとうげのねこまた)

昔、あったそうじゃ。谷峠に人をとって食ってしまう、大変に恐い猫又が棲(す)んでいたと。強い侍(さむらい)が幾人(いくにん)も来て、弓矢を射かけるのだが、どれもチンチンはねて、当てることが出来なかった。

この昔話を聴く

鍛冶屋と医者と巫女(かじやといしゃとみこ)

むがしあったけど。鍛冶屋(かじや)と医者と巫女(みこ)が三人死んで、道づれになったけど。地獄さ行くど、こんどまず、医者から閻魔大王(えんまだいおう)…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!