太郎兵衛かわいいそスギ(>_<)たい ( 10歳未満 / 男性 )
― 栃木県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし。
下野(しもつけ)の国(くに)、今の栃木県のある村に、太郎兵ヱ(たろべえ)というお百姓がおった。
ある時、太郎兵ヱは、なーんもしないのに、代官所(だいかんしょ)の役人につかまってしもうた。
何でも、一揆(いっき)をおこそうとした罪(つみ)で、はりつけの刑(けい)にするということだ。 村の衆(しゅう)たちは、
「なーんにもしてねぇのに、太郎兵ヱをはりつけにするとは、ひどすぎるぞー」
というて、代官所へどっと押しかけた。が、代官所では、門(もん)も開けてくれん。
村のみんなは、何日も何日も門の前で、
「どうか、太郎兵ヱの命を助けてやってくだされー」
と、お願いをしたが、門の中からは何の答えも返ってこなかった。
とうとう、太郎兵ヱがはりつけの刑を受ける日の朝となった。
村の衆たちが、もはやこれまで、と思うていると、突然(とつぜん)、代官所の中から、
「開門(かいもん)!」
という、大きな声が聞こえて来た。
ギギー、
門が開くと、白はちまきにたすきがけの役人が馬に乗ってあらわれた。
その役人は、門の前にいる村の衆に、
「太郎兵ヱは、無実と相(あい)わかった。これから処刑(しょけい)を止(や)めさせに行く」
と言うと、馬にひとムチ当て、「それっ!」とばかりに、処刑場へ向かって馬を走らせた。
門の前にいた村の衆は、口々(くちぐち)に、
「よかった」「よかった」
と小踊(こおど)りして、馬のあとを追いかけた。
ちょうどそのころ、太郎兵ヱは、捕らえられている場所から、処刑場へ向かおうとしているところだった。
見張りの役人が、太郎兵ヱをかわいそうに思ったのか、
「朝の茶でも、いっぱいのまんか」
と言うた。
しかし、太郎兵ヱは、
「いや、おれはじきに殺されるんだから、茶なんかいらん。早く連(つ)れていってくれ」
といい捨てた。
太郎兵ヱは処刑場に引き出されて行った。
早馬に乗った役人は、ムチを、ビシッ、ビシッと打ち、処刑場にかけつけていた。やがて、処刑場が見えたとき、
「そのはりつけ、やめーい。はりつけ、やめーい」
と、大声で叫んだ。
ところが、処刑場にいた役人は、その声を
「つけー、つけー」
と聞いたもんだから、あわてて、
「それーっ、はじめー」
と合図をした。
太郎兵ヱは、槍(やり)でつかれて殺されてしもうた。
処刑場にいた人々は、早馬で駆け込んで来た役人から、太郎兵ヱが無実の罪であったことを聞かされた。
見張りの役人は、
「ほんのちょっとの差で間に合わなんだか、朝、わしがすすめたお茶さえ飲んでおれば、死なずにすんだものを…」
と、悔(くや)んだと。
こんなことがあってから、”朝のお茶はその日の難(なん)をのがれる”と言うて、人にすすめられたら、必ず飲むもんだと。
市(いち)がさけた。
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なんと昔があったと。 むかし、あるところに馬子(まご)があった。 馬を追って、毎日毎日山道を通(かよ)っていたと。 寒うなった頃(ころ)、山向こうの人に頼(たの)まれて、馬の背(せ)にブリをくくりつけて山道を行ったと。
「朝茶は難のがれ」のみんなの声
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