民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋 > 
  2. 動物や異類の婿にまつわる昔話 > 
  3. 鬼の田植

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

おにのたうえ
『鬼の田植』

― 新潟県(佐渡) ―
語り 井上 瑤
再話 藤田 勝治

 節分のとき、あなたの家では何と言って豆をまきますか?
 ふつうは、「福は内、鬼は外」って豆をまきますよね。それが「福は内、鬼も内」と、こう、まく家がある。その家もずっと昔には「福は内、鬼は外」と、豆をまいていたんだけど…

 とんと昔があったげナ。佐渡(さど)の黒姫(くろひめ)に一軒の庄屋(しょうや)があったと。その家の田んぼは"山田(やまだ)"ちゅうて、山の上からふもとまでずっと続く田んぼでナ、田植の頃になると、近所の者がみな手伝って、山の上の方からだんだん植えていくそうな。
 ある年のこと。
 田植しとると雨が降ってきて、そりゃもう底がぬけるほどの大雨になったと。 


 「こりゃもうたまらん。明日にしょう」
 言うて、苗(なえ)を田んぼのあぜに置いて、しかたなく帰ったと。
 次の日になると、きのうの雨はウソのようにやみ、カリッと天気になったと。やれやれと田んぼに行ってみると、なんと、あぜに置いた苗がちゃんと植(う)わっている。
 「おめえが植えたかや」
 「おめえが植えたかや」
と、口ぐちに聞いたが誰も知らん。なんとも不思議なこともあるもんじゃと思っておったと。 

 やがて秋になって田んぼに行ってみたら、なんと、穂の中にもう白い米が出来とった。話を聞いて、見に来る者がいるはおがみに来る者がいるは、大騒ぎになったと。
 次の年になって、田植の時、ためしに苗をそっと置いて帰ってみたらまた植えてあって、秋になったらやっぱり白い米がなっとったと。


 そうやって何年か続いたある年のこと。
 庄屋の婆(ば)サが、「正体見とどけてやろう」ちゅうて、田んぼに出かけたと。そして、木かげに隠れて息ころして待っていたと。
 やがて、夜中になって、笛(ふえ)の音(ね)や太鼓(たいこ)の音(おと)が聞こえて来た。
 婆サは、目をあけるだけあけてよおっく見ると、誰だか田植していたと。
 笛や太鼓の調子に合わせて唄も聞こえてきたと。

 ずんずくぼうしや て-て-ころ
 穂にゃならんでも つっぱらめぇ 
 あんまりおもしろいので、婆サも、つい浮かれて「それやれ、これやれ」と、はやしながら踊(おど)りだしたそうな。


 すると、田植してたのが手を止め、婆サの方を見たと。婆サの見たのは鬼じゃったと。
 婆サは、驚ろいて気が遠くなったが、もう、田んぼには誰もおらんかったと。 
 それからは、苗を置いても植えてもらえなかったと。
 その家では、それからというもの、「ありがたい鬼じゃ」ちゅうて、節分には「福は内鬼も内」と、豆まきするようになったんだと。

 いっちゃはんじゃさけた。

「鬼の田植」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

大分県の笠地蔵・ばっちょ笠(ばっちょがさ)

むかし、むかし、あるところに、爺(じい)さんと婆(ばあ)さんが住んでおったと。家が貧乏(びんぼう)で、年取りの夜(よ)さになっても、一粒(ひとつぶ)…

この昔話を聴く

天人子(てんにんこ)

昔、岩手県の六角牛山のふもとの里に百姓をしている惣助という男があったと。里の附近には七つの池があり、その中のひとつに巫女石という石のある池があった。

この昔話を聴く

飛騨の工匠(ひだのたくみ)

むかし、備中(びっちゅう)の国、今の岡山県の殿様が、立派なお宮を造ろうと思うて、国中の大工を集めたことがあった。たくさんの大工が集まって来たが、国一…

この昔話を聴く

現在867話掲載中!