民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 頓知のきく人にまつわる昔話
  3. 住持の夜遊び

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

じゅうじのよあそび
『住持の夜遊び』

― 島根県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、ある山寺に住持と小僧さんとが住んであったと。
 お坊さんは、昔は女房を持つことが出来んかったので、里(さと)に、こっそりと女房をこしらえる人が多かったと。
 この住持も里に女房をこしらえていたと。
 夜になると住持は里へ下りて行く。すると、山寺には小僧さんひとりっきりだ。小僧さんはたかだか十歳位だったと。
 山寺の夜は真っ暗闇につつまれる。そんななかで小僧さんひとりっきり。周囲(まわり)の森が風でざわめくだけで不気味なのに、フクローがホホー、ホホーと啼(な)き、狼の遠吠えがかすかに聞こえてこようものなら、小僧さんは、両耳を手でふさいで布団のなかで縮こまっていたと。 

 
 夜があまりにさみしくて恐ろしいものだから、ある夜、小僧さんは硯(すずり)を出して書きものをした。半紙に書いたのは、漢数字の一二三四(し)五六七(しち)八九十だけ。それを住持の文机(ふづくえ)の上に置いたと。

 翌朝住持が帰ってきて見つけたと。
 「小僧、小僧。夜さりに誰ぞ来たか」
 「いいえ、誰れも来やせんです」
 「ここに、一二三四五六七八九十と書いたのがあるが」
 「はい、そうですか」
 「ほんに誰ぞも来んかったか」
 「はい」
 「では、これはわれ(お前)が書いたのだな」
 「いえ、わたしは知りません」
 「では、われの知らぬ間(ま)に誰ぞが来て、書いて置いて行ったのだろうなぁ」
 「なんて書いて行ったのでしょう」
 「さあ、どうも判(はん)じものらしいが、何と判じたらよいのやら。わしにはさっぱり判(わか)らん。近頃、めっぽう賢くなったわれなら読めるかも知れん。ちょいと判じてくれんか」


 小僧さん、住持に誉められてうれしくなった。昨夜書いた半紙を受け取り、
 「これは、こう読むのです。
 ひと(一)りに知れ、ふた(二)りに知れりゃ、さん(三)ざんいう。知(し)れちゃ仕方ない、業(ごう)(五)をわかす。業をわかせばろく(六)なことにならん。質(七)屋の八(八)兵衛さんの娘にほれくさり、苦(九)労すんなよ。この住(十)持のばかたれ」
ととくいげに判じあげた。そのとたん、ピシャリッと頭を叩かれた。 
 「われに判じ上げられたということは、つまりだ、われが書いた、ちゅうことだろが」
と叱かられたと。住持はすっかりお見透しであった。

 けっちりこ。

「住持の夜遊び」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

怖い

俺やったら、超激怖がるわ( 10歳未満 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

鶴の嫁さま(つるのよめさま)

 むかし、ある若者が山道を歩いていると、一羽の鶴(つる)が、わなに足をはさまれて、もがいていた。若者は、  「命あるものをいじめちゃならん」 と、わなをはずしてあげた。鶴は、ハタハタと舞(ま)いあがり、若者の頭の上をなんどもまわって、それから、どこかへ飛び去っていった。

この昔話を聴く

かわうその恩返し(かわうそのおんがえし)

むかし、あるところに貧しい男がおって、野良仕事をして暮らしておったと。あるとき、男は牛に草を食べさせようと、家から少し離れたところにつないでおいだと。

この昔話を聴く

シガマの嫁コ(しがまのよめこ)

 昔、独(ひと)り身の若者、いであったど。  ある冬の朝に、茅葺(かやぶ)きの屋根から氷柱(しがま)コ下がっていで、雫(しずく)コポタポタ落ちでいるのを見でいだど。

この昔話を聴く

現在883話掲載中!