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いのししとかめ
『猪と亀』

― 長野県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、むかしの大昔。大ぜいの獣(けだもの)が集まって力競べをしたことがあったと。
 その頃は、猪はまだ首が長かったし、亀は手足が長かったと。
 組合わせでその猪と亀とが力競べをすることになったと。
 猪と亀の取っ組みあいが始まった。
 猪は亀をひっくり返えそうとするし、亀は猪を持ち上(あ)げようとする。相方(そうほう)、真向勝負(まっこうしょうぶ)の力(ちから)ずもうになったと。
 そしたら、あっちから「猪、負けるなあ」、こっちから「亀、頑張れぇ」って声がかかり、それはそれは大騒ぎだ。いい勝負だと。 

 
 が、そのうちに亀、甲らが重くて、だんだん動きがにぶくなった。それを猪の牙にひっかけられて、とうとう、亀、投げ飛ばされたと。
 ドシーンと地べたに落ちたとき、亀は、甲らの重さで手足がめり込んだと。
 亀はしばらく医者の世話になった。治ったときには手足が太く短かくなっていて、這いつくばって歩くようになったと。
 それ以来、亀はあんな格好になってしまったと。

 
 一方、勝った猪は大威張りだ。
 「俺は力競べにもつよいがかけっこも速いぞ」
というて、これ見よがしに、えらい勢いでかけて行った。


 そしたら、道の曲がり角で曲がりそこねて、正面にあった大岩に頭から突っ込んでしまった。ドシーンとぶつかったとき重さで首がめり込んだと。
 猪はしばらく医者の世話になった。治ったときには首が太く短くなっていて、ペチャ鼻で歩くようになったと。
 それ以来、猪はあんな格好(かっこう)になってしまったと。

 それっきり。

「猪と亀」のみんなの声

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