シュールな話ですね。
― 宮城県 ―
語り 井上 瑤
再話 佐々木 徳夫
整理・加筆 六渡 邦昭
むがす、卓兵衛(たくべえ)さんという頓智(とんち)のある人がいたど。
お伊勢参(いせまい)りから無事(ぶじ)に帰って来たんで、日頃ねんごろにしている和尚(おしょう)さんのどこさ、お土産(みやげ)を持ってったど。
「ああ、卓兵衛か。いつ帰った」
「はい、ゆんべ帰りすた」
挿絵:福本隆男
「疲(つか)れたべな。上方(かみがた)はどうだった」
「はい、日本の広いのにはおったまげすた。十足用意(じゅっそくようい)した草鞋(わらじ)もたちまち履(は)きつぶしたし、途中(とちゅう)で何足(なんぞく)買(か)ったげんども、二日(ふつか)で一足の割りに擦(す)り切れるんで、鉄(かね)の草鞋を買って履きすた」
「ほう、鉄(かね)の草鞋とはな、さぞ重かろうが。ンじゃが、草鞋の心配はせんでもようなったな」
「ところが、その鉄(かね)の草鞋もいくがいくがいくうちにだんだん薄(うす)くなって、お伊勢さんに着いた頃には経木(きょうぎ)みたいにペラペラになりすた。仕方(しかた)なく親から貰(もら)った足で、じかに歩きすた」
「素足(すあし)でか、痛(いた)かったべな」
「痛いもなにも、石ころが足の裏(うら)に食い込むうちはまだよかったげんども、だんだん擦り切れて、踝(くるぶし)まで減(へ)ってしまいすた」
「そんなんで、よく我慢(がまん)できたなぁ」
「踝(くるぶし)までは未(ま)だいい方で、だんだん擦り減って、膝小僧(ひざこぞう)から腿(もも)の付け根まで減ってしまいすた」
「ほほう、卸(おろ)し金(がね)あてられたみたいにか」
「はい」
「それは大変だったな。それからなじょして歩いてきたかや」
「胴(どう)だけでは歩げねんで、松葉杖(まつばづえ)を買って歩きすた。したが、胴は柔(やわ)らかいんで、たちまち擦り減って、とうどう首の付け根までになってしまいすた」
「ほう、すごいことになったな」
「はい、そこで仕方なく、風呂敷(ふろしき)さ首を包んで、どっこいしょと担(かつ)いで、ゆんべ、やっと帰らすた」
挿絵:福本隆男
「その首、誰が担いだのや」
「はい、この俺でがす」
「これ、卓兵衛、わしまで担いだな」
えんつこもんつこ さげた。
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「卓兵衛話」のみんなの声
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