民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 特異な能力にまつわる昔話
  3. 犬の眼

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

いぬのめ
『犬の眼』

― 宮城県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、ある男が眼の病気になったそうな。痛くって痛くって、だんだん見えんようになった。
 それで、眼医者(めいしゃ)さ行って診(み)てもらったら、
 「これは、眼を抜(ぬ)いて、よおっく手入れをせなんだら持たない」
と、こう言われたんだと。
 

 
犬の眼挿絵:福本隆男
 
 医者様はさっそく眼を抜いて、よおっく手入れしてから日向(ひなた)に干(ほ)したそうな。
 ところが、あんまり干し過ぎて、縮(ちぢ)んで小さくなってしまった。
 「ありゃ、こりゃいけんわい」
と、医者様はその目を水にしばらくふやかしておいたんだと。

 
犬の眼挿絵:福本隆男

 そしたら、今度はふやけ過ぎて大きくなってしまった。
 「ありゃ、また失敗しょった」
 それで、ちょっぴり小さくしよ思って、またまた日向へ干したそうな。


 そしたら、犬が来て医者様が用たししているすきに、その眼を食ってしまった。
 「ありゃ、こりゃ困った」
 医者様じゃ仕方なく
<この犬の眼でも抜いて入れてやろ。なに、かまうもんか>
と、犬の眼を抜いてその男に入れてやったんだと。
 「どうじゃ、見えるか」
 「へぇ、おかげさんで足元がよおっく」
 男は喜んで帰って行ったと。


 ところが、それからというもの、その男は糞(ふん)を見るとむしょうに食いたくなる。困ってしまい、また眼医者に行って話しをしたそうな。
 <こりゃ、犬の眼のせいにちがいない>
と思った医者様は、
 「なにすぐなおる。わしは名医じゃからして理由(わけ)は分かっとる」
と安心させて、さっそく眼を抜いて、なにやら手入れしたんだと。
 ところが、そそっかしい医者様は裏(うら)がえしに眼を入れてしまわれた。

 
犬の眼挿絵:福本隆男

 そしたら、今度は身体の中がよおっく見えるようになったんだと。
 自分の身体の加減が分かるようになった男は、病気ひとつしなくなって、しまいにゃあ五臓六腑(ごぞうろっぷ)をあつかう評判の医者様になったそうな。
 
 どんびすかんこねぇけど。
 

「犬の眼」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

驚き

この「犬の眼」、は八つ前の「犬の眼」とほぼ同じ話ですね。 同じ話を、一つの県の話として二つも載せる意味はないように思いますけど。

怖い

眼医者は結構すごいことをするなと思いました。 でも、男が何度も眼医者に行ってそのたびに眼をくり抜かれたのが怖かったです。

驚き

災い転じて福となす( 10歳未満 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

五月節句の菖蒲湯(ごがつせっくのしょうぶゆ)

むかし、あるところに婆(ばあ)さんと娘がいてあったと。ある晩げ、眠(ねむ)っていた婆さんは何かの音で目が覚(さ)めた。どうやら娘の部屋に若者風なのが…

この昔話を聴く

貧乏神の土産(びんぼうがみのみやげ)

むかし、あるところに貧乏な爺(じい)と婆(ばあ)がおったと。師走(しわす)になったのに米が一粒もなくて、大晦日(おおみそか)の晩を侘(わび)しく過ご…

この昔話を聴く

吉四六さんの鴨捕り(きっちょむさんのかもとり)

吉四六(きっちょむ)さんが、あるとき、大きな瓢箪(ひょうたん)のくびれたところに長い縄(なわ)をくくりつけ、鴨(かも)のおりる池にやって来た。縄の端…

この昔話を聴く

現在886話掲載中!