帰るときにごぼうの葉がよいのか?手ぬぐいを借りて腰に巻いた方がまだマシな気がする。( 40代 / 女性 )
― 香川県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
昔あるところにお寺があって、和尚(おしょう)さんが一人おったと。
あるとき和尚さんは、法事(ほうじ)に呼ばれて、一軒(いっけん)の貧(まず)しい檀家(だんか)に行ったと。
お経を読んで法事が終わったら、その家のおっ母(か)さんが、
「私ン家(ち)はこのとうりの貧乏家ですから、何のおもてなしは出来ませんが、せめて思うて、お風呂の用意ができておりますから、どうぞお入りになって温(ぬく)もうて下さい」
というたと。そして子供を呼んで、
「お湯かげんはな、ぬるかったら焚(た)いてあげるんだよ」
と言いつけたと。
和尚さんは、
「それは何よりのごちそう。ナムナム」
というて、着物を脱(ぬ)いで入ったら、お湯がぬるかったと。それで風呂の中から、外の焚(た)き口にいる子供に、
「少しぬるいから、火を焚いてくれんか」
というたと。そしたら子供が、
「焚くもんが無い」
というから、
「焚くもんがなかったら何でもええわ。その辺の物を何でも燃(も)やしてくれ。寒うていかん」
いうてやったと。
子供は、そこここからいろんな物を集めて燃やしたと。
湯がだんだんぬくうなって、和尚さんは、
「ごくらく、極楽(ごくらく)」
というて、気持ち良さそうに湯につかっておったと。
「ええ湯かげんだった」
というて出て来たら、着物が見あたらん。
「…たしか、ここへ脱いで置いたんだが……。
「ここにあったわしの着物、どうしたんか。どこかにしまってくれてあるんか」
と子供に聞いたら、子供はすまして、
「いいえ、和尚さんが『何でもええから燃やしてくれ』いいましたから焚きました」
というたと。
「ありゃあ、なんとわしの衣(ころも)を焚いたか。どうりで極楽のはずじゃ」
と、こういうたところへ、この家のおっ母さんが、奥から、
「温(ぬく)うなられましたか」
というて、来る気配(けはい)がした。
「こりゃいかん」
和尚さん、あわてて手ぬぐいを前に当てがっておろおろしたと。
子供がごぼうの葉を二、三枚むしって来て、
「和尚さん、これ」
というて差し出したら、和尚さん、それを受け取って、前後(まえうしろ)に当てがって、ほうほう、というて帰っていったと。
さん候(そうろう)。
帰るときにごぼうの葉がよいのか?手ぬぐいを借りて腰に巻いた方がまだマシな気がする。( 40代 / 女性 )
むかし、あるところにお寺があって、その門前に貧乏(びんぼう)な夫(とど)と嬶(かか)が暮(く)らしておっだど。 あるとき夫が遠くへ旅に出掛(か)けたど。そして、とある長者どの家さ、金持ちになる弟子にして呉(く)ろと頼(たの)んだど。
あったてんがの。 昔あるところに、彦一という男があったと。頓知(とんち)のきいた面白い男だったと。 彦一の裏山(うらやま)に狸(たぬき)が一匹住んでいて、それがまた、人をたぶらかしたりするのが大好きなやつだったと。
「和尚さんと極楽風呂」のみんなの声
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