民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 面白い人・面白い村にまつわる昔話
  3. 避けられない年取り

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

さけられないとしとり
『避けられない年取り』

― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 佐々木 徳夫
再々話 六渡 邦昭

 むがしあったずもな。
 あるどこに年取りだぐねえ男がいだんだど。
 ある年の、暮れも迫(せ)まったごろ、その男が、
 「年取りだぐねえ、年取りだぐねえ」
 って、村の中を口ぐせのように言って歩いでだど。村の人が笑っで、
 「なんぼ年取りだぐねえたって、誰でも年は取んだじぇ。お前(め)ばかり年取らね訳(わ)げにはいがねんだじぇ」
 って言うど、
 「おら、年取りの晩には、大根穴さ隠れでお年神様と出合わねぇようにする。そしたら年取らねぇべが」
 って言ったど。
 

 
 そしてるうちに大歳(おおみそか)の日が来だど。
 その晩、男は大根穴さ隠れだど。
 お年神様が袋さいっぺえ年を入れで、あっちさもこっちさも配り歩いだど。
 
避けられない年取り挿絵:福本隆男
 

 
 ほだども、急に亡ぐなった人がいだりして、袋さいっぺえ年を余してしまっだど。年神様は、
 「さあて、なじょしたら良がんべ。こったに年が余ってしもうた。持っで帰るのも重いし、どごたりさ、やだらに投げるわげにいがねえし」
 どて、あっちこっち捜したれば、村はずれの畑に、大(お)っきな大根穴あっだど。
 「おお、こごだこごだ、こごがええ。こごさ投げで行ぐべが」
 どて、袋の口あげで、さかさまにドサッど、ぶちまげだど。
 すたれば、大根穴さ隠れでだ男の頭さ、いっぺぇ、年がふりかがっでしまっだど。
 さあ、おおごどだ。男の頭は、あれやあれやといっでるうぢに白髪になって、白髪になっだど目えむいでだら、毛が抜げで、禿(は)げでしまっだど。顔にシワ寄って腰こ曲がってしまっで、やっどごやっどご大根穴がら出はって来だども、まるっきり年寄りになってしまったど。
 年どいうものは、なんぼ大根穴さ隠れだって、追(ぼ)っかげできて取らね訳げにゃいがねもんだどや。

 どんとはれ。

「避けられない年取り」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

年をとりたくないとわがままを言ったら余計年をとってしまった。( 10代 / 男性 )

楽しい

年はたらなきゃ行けないんですね( 10歳未満 )

驚き

岩手日報のコラム欄で知りました。 笑える、年はどうしたって取るもの。 大根の穴のぞいたてみたくなる話。 ( 50代 / 女性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

赤い箆 白い箆(あかいへら しろいへら)

むかし、あるところに生まれついてのよくよくの貧乏者(びんぼうもん)があったと。どれほど働いても稼いでも生計(くらし)がたたないので、旅に出た。旅に出…

この昔話を聴く

銭コがモッケになった話(じぇんこがもっけになったはなし)

むかし、津軽(つがる)のある村さ、そりゃあ、そりゃあ、ケチで欲(よく)たかりの金貸しがいたど。ケチもケチも、この金貸しゃあ情(なさ)け容赦(ようしゃ)なく銭(じぇん)コば取りたてるもんで・・・

この昔話を聴く

雷様の手伝(かみなりさまのてつだい)

 むかし、あるところに一人の男があった。町へ行ってみると苗木(なえぎ)売りの爺(じ)さまがいたから、桃の木の苗木を一木買ってきて、裏(うら)の畑の端(はた)に植えたと。肥料(ひりょう)をやって、水もやり、早くおがれ、というてその夜は寝た。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!