― 広島県 ―
語り 井上 瑤
再話 垣内 稔
整理・加筆 六渡 邦昭
むかし、むかし。
あるよく晴れた日のこと。
たんぼのあぜに田螺(たにし)がのこのことはいあがり、気持ちよさそうに日向(ひなた)ぼっこをしていたと。
すると、そこへ、さっと黒い影が陽をさえぎったかと思うと、一羽の烏(からす)が舞いおりて、足のさきで、ぐっと田螺をおさえつけたと。
あっという間の出来事で、田螺は逃げるひまもなかったと。
烏がそのかたいくちばしで、田螺のからをうちこわして食べようとしたら、田螺が、
「烏さんたあ、あんたのことか。
水晶眼(すいしょうまなこ)にゃ、ビロードのずきん。
こわいこわいと鳴いてはみても
けっしてこわいと言うんじゃない。
かんろかんろと鳴く声聞けば
しゃかのせっぽうなむあみだぶつ。
ほんとに烏さんとは、立派な鳥じゃのう、
いや鳥の中の王様のようじゃ」
というた。
烏は己のことをほめられたもんで、つい、いい気になって足に込めた力を抜き、カァカァと大声で鳴いたと。
そのすきを待っていた田螺は、いまだ、とばかりに土の中にもぐり、土の中から、
「おどれの眼(まなこ)は ナメクジ眼
おどれの足みりゃあ鎌屋(かまや)の火ばし
おどれの姿はくろはげあばた
おどれの声聞きゃ寝た子も起きる
がらくたがらくた があ」
と、せいいっぱいの悪口をわめき立てたと。
烏は、しまった、と思ったがあとのまつり。
くちばしで土をつついたら、田螺はもっともぐる。
烏はどうすることも出来ん。仕方ない、田螺を食べるのをあきらめた。くやしそうに、
「くわん、くわん」
と鳴いて、西の空へ飛んで行ったと。
やあれ、がっちりこ、火の用心。
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とんとむかし。あるところに、兄と弟が住んでおった。あるとき、兄は病気になって、ちっとも働けんようになってしまった。それで、弟は、 「あんちゃんの分まで、おれが働かないかんな」と、毎日毎日、汗みどろになって働いていた。
むがし あったど。 あるどごに、誰も住んでいないお寺あったど。 これまで和尚(おしょう)さん幾人(いくたり)も来たけれども、翌朝になると居ねぐなっている。まんだ解(と)かれていね荷物(にもつ)だけが残っていて、奇妙な塩梅(あんばい)だと。
「田螺と烏の歌問答」のみんなの声
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