民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 動物の争いにまつわる昔話
  3. 田螺と烏の歌問答

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

たにしとからすのうたもんどう
『田螺と烏の歌問答』

― 広島県 ―
語り 井上 瑤
再話 垣内 稔
整理・加筆 六渡 邦昭

 むかし、むかし。
 あるよく晴れた日のこと。
 たんぼのあぜに田螺(たにし)がのこのことはいあがり、気持ちよさそうに日向(ひなた)ぼっこをしていたと。
 すると、そこへ、さっと黒い影が陽をさえぎったかと思うと、一羽の烏(からす)が舞いおりて、足のさきで、ぐっと田螺をおさえつけたと。
 あっという間の出来事で、田螺は逃げるひまもなかったと。


 烏がそのかたいくちばしで、田螺のからをうちこわして食べようとしたら、田螺が、
 「烏さんたあ、あんたのことか。
 水晶眼(すいしょうまなこ)にゃ、ビロードのずきん。
 こわいこわいと鳴いてはみても
 けっしてこわいと言うんじゃない。
 かんろかんろと鳴く声聞けば
 しゃかのせっぽうなむあみだぶつ。
 ほんとに烏さんとは、立派な鳥じゃのう、
 いや鳥の中の王様のようじゃ」
というた。
 烏は己のことをほめられたもんで、つい、いい気になって足に込めた力を抜き、カァカァと大声で鳴いたと。


 そのすきを待っていた田螺は、いまだ、とばかりに土の中にもぐり、土の中から、

 「おどれの眼(まなこ)は ナメクジ眼
 おどれの足みりゃあ鎌屋(かまや)の火ばし
 おどれの姿はくろはげあばた
 おどれの声聞きゃ寝た子も起きる
 がらくたがらくた があ」
と、せいいっぱいの悪口をわめき立てたと。

 烏は、しまった、と思ったがあとのまつり。
 くちばしで土をつついたら、田螺はもっともぐる。
 烏はどうすることも出来ん。仕方ない、田螺を食べるのをあきらめた。くやしそうに、
 「くわん、くわん」
と鳴いて、西の空へ飛んで行ったと。

 やあれ、がっちりこ、火の用心。

 

「田螺と烏の歌問答」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

一番に感想を投稿してみませんか?

民話の部屋ではみなさんのご感想をお待ちしております。

「感想を投稿する!」ボタンをクリックして

さっそく投稿してみましょう!

こんなおはなしも聴いてみませんか?

金の鳩(きんのはと)

昔々、あるところに、太郎と次郎と三郎がおったと。あるとき太郎は山へ薪(たきぎ)とりに出かけたと。昼どきになって握り飯をほうばっていたら、白(しろ)い…

この昔話を聴く

一人参宮(ひとりさんぐう)

昔、昔。あるところに分限者(ぶげんしゃ)の家があって吉之助(きちのすけ)ていう人いてあったすと。小さいときは体弱くて、少し風吹けば風邪(かぜ)ひくし…

この昔話を聴く

一時に咲いたソバの花(いっときにさいたそばのはな)

ずっとむかし。九州の天草の島々には、キリスト教を信じる沢山の人々がおった。ところが豊臣秀吉や徳川家康は、キリスト教は外国からきたよくない宗教だから信…

この昔話を聴く

現在885話掲載中!