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とりとけもののせんそう
『鳥とケモノの戦争』

― 広島県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 なんと昔があったげな。昔にの、狸と狐が山を歩きよったら鶯の巣があったんで、
 「ええっ!こがあなもの壊(こわ)してやれ」
 ちゅうて、足で蹴散らかしてしもうたげな。
 そん中にゃぁ卵が三つあったが、それもみな潰(つぶ)れてしもうたげな。
 親の鶯がその様子を見て、よっぽど腹ァ立てたり悲しがって、鳥の王様の鷲(わし)のところへ行っての、仇(あだ)ァとってもらいたい言うたげな。
 鷲は、ケモノの大様のライオンのところへ行っての、言うたげな。そしたらそこへ狸と狐が呼び出されたげなの、狸と狐は自分らが悪いとは言われんで、色々考えて鳥の方が悪いように嘘を言うたげな。 

 
 そこでとうとう、鳥とケモノが戦争をすることになったげな。
 ケモノの方じゃぁ、みんなが集まって作戦の相談ぶつことになったげな。
 そのことを知った鳥の方じゃあ、一番小さい蚊(か)を偵察(ていさつ)にやったげな。蚊が三匹柴(しば)の葉の裏にとまっての、聞きよったら、
 「狐どんは考えがええけぇ、あれに指図(さしず)をしてもらおう。そいで、狐が尻尾を上げたら進め、尻尾を下ろしたら後へ引け」
 ちゅうことになったげな。
 蚊がそのことを聞いて戻ったら、今度ぁ鳥は、蜂に頼みに行ったげな。そして、
 「狐が尻尾を上げりゃぁその根元のところをチカッと刺してやれ、尻尾を下げるときにゃぁ背中を刺してやれ」
 ちゅうて頼んだげな。
 いよいよ戦争になったげな。


 ケモノ方(がた)じゃぁ狐が指図するんだが、”やれ今だ”と進ませよう思うて尻尾を上げりゃぁ、蜂が来て根元を刺すもんじゃけぇ、痛(いと)うてかなわんで下ろすし、後(うしろ)へ引かしょう思うて尻尾を下ろしとっても背中を蜂が刺すんでの、蜂を追っぱらおう思うて尻尾をあげるげな。
 そがあなこたぁ皆は知らんけえの、狐の尻尾を見とって、進んだり引いたりするんじゃがの、めちゃめちゃで、どうもええことにならんげな。 
 そんなんでの、鳥が勝ったりケモノが勝ったりしょったげな。
 そんときコウモリがの、ケモノが勝ちそうなときにゃぁ、
 「おれは足ィ四本あるし、乳が子供育てとるけぇ、おれケモノの仲間だ」
 ちゅうて、ケモノ側につき、鳥が勝ちそうなときにゃあ
 「おれは羽根あるけえ鳥だな」
 ちゅうて、今度ぁ鳥側につき、強い方ばかり味方するげな。 

 
 その内、いつまで経(た)ってもきりがつかんけえ、はぁ、戦争やめようちゅうことになっての、喧嘩(けんか)の元(もと)がなくなるように動き廻る時間を決めたげな。
 鳥は鳥目ちゅうての、夜目がきかんもんじゃけえ、日中(にっちゅう)動くことになり、ケモノは夜目がきくもんじゃけえ、主(おも)に夜動くことになったげな。
 ところがコウモリは、あっち付きこっち付きしたもんじゃけえ、鳥からもケモノからも
 「お前なんか、おら方の仲間でない」
 ちゅうて毛嫌いされたげな。
 それでの、仕様がないけえ、夕方わずかだけ出よって虫ィ食(く)いよるげな。
 それじゃけぇ、強い方ばっかり味方して、あっちつき、こっちつきするのを『コウモリみたいだ』ちゅうて、今でも言うげな。

 もうし、昔けっちりこ。

「鳥とケモノの戦争」のみんなの声

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面白い!( 30代 / 女性 )

楽しい

蜂や蚊は昆虫ですが、羽があって飛べるから鳥の仲間に入ったんですね。 しかしコウモリは哺乳類なんだから獣扱いで良かったように思いますが。( 20代 / 男性 )

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