音楽も入ってきて楽しい話しだなーっておもいました( 50代 / 女性 )
― 岩手県 ―
語り 井上 瑤
再話 佐々木 喜善
整理 六渡 邦昭
むかし、むかし、あるところに獺(かわうそ)と狐(きつね)があって、道で行き合ったと。狐が、
「ざいざい獺モライどの、よい所で行き合った。実はこれからお前の所さ話しに行くところだった」
というた。獺が
「何か用でもあったか」
というと、狐は、
「なに、別段(べつだん)の用事ってこたぁないが、これからの冬の夜中(よなか)、互(たがい)に呼ばれあいっこをするべえと思ってさ」
というた。
挿絵:福本隆男
「それもいいな」
と獺が賛成(さんせい)したら、
「そんなら、先(ま)ず俺が獺モライどのを訪ねて行くが、どうだ」
「ああ、いいよ」
ということになったと。
最初の日、獺は冷(つめ)たい川の中へ潜(もぐ)っていろいろな雑魚(ざこ)を捕(と)り、御馳走(ごちそう)をこしらえた。狐はたらふく食べて大満足(だいまんぞく)で帰って行った。
翌日は狐が御馳走を作る番だ。獺は、兎汁(うさぎじる)でもたべさせてもらえるかと、生つばのみのみ狐の家を訪ねた。が、狐の家には御馳走の匂(にお)いどころか、客迎(きゃくむか)えするような気振(けぶ)りも無かった。いぶかった獺が、
「ざいざい狐モライ、俺、来たぞ」
といいながら家の中へ入っていくと、狐は返事もしないで、一生懸命(いっしょうけんめい)に上の方を見ていた。
挿絵:福本隆男
獺が何をしたと聞くと、狐はやっと、
「獺モライどの、申し訳ないが、実は俺、今晩(こんばん)急に空守役(そらまもりやく)をおおせつかって、それで上の方ばかり見て居なくちゃならないんだ。今夜の所は許して帰ってくれんか」
というた。
獺は首をかしげかしげ帰ったと。
そのあしたの晩、獺はまた狐の家を訪ねた。
「ざいざい狐モライ、今晩も来たぜ」
といいながら家の中へ入って行くと、狐は返事もしないで、一生懸命に下の方を見ていた。
獺が何をしたと聞くと、狐はやっと、
「獺モライどの、今晩も運悪く地守役(じまもりやく)をおおせつかって、それで下の方ばかり見ていなくちゃならないんだ。本当に申し訳がないけど、今夜も帰ってくれんか」
というた。
獺は狐のうそに気がついた。が、そのまま何食わぬ顔で帰ったと。
その次の晩、狐が獺のところへやって来た。
「獺モライどのいたか。昨日(きのう)と一昨日(おととい)は申し訳なかった。実は今夜獺モライどのを招(よ)ぼうと思ったけれども、仕度(したく)が出来ないんだ。これから魚を捕りに行くべえと思うが、いったいどうやれば取れるのか教えてくれんか」
と狐がいうたら、獺は、
「そんなこと、とっくに識(し)ってると思うていたが…。なあに、訳ないさ。今晩みたくシバレル晩が一番いい。川さ行って、尾っぽを川の水に浸していればいいだけのことさ。
魚がチョロッとやってきて尾っぽにからみつく。
チョロッ、ピタッ、チョロッ、ピタッてからみつかせておいて、たくさんからみついたな、という頃合(ころあ)いに、おもいっきり尾っぽを引き上げるのさ」
と教えてやった。そしたら狐は、
「フフン、それは識ってる。俺は別の方法を識りたかったんだけど、まあいいや」
というて、プッと置(お)き屁(へ)して、走って行った。
挿絵:福本隆男
狐は川の水に尾っぽを浸しながら、
「獺ってのはどこまで気が良(い)いのやら。俺にだまされているのをなぁんにも知らんと、魚捕りの秘伝(ひでん)までおしえてくれるとは」
と、ほくそ笑んでいたと。
すると、チョロと流れてきてピタッと尾っぽにくっつくものがあった。
「おっ、これだな。魚捕りなんてチョロイもんだ。ようし、あとはこのままいっぱいひっつけてから、思いっきりひきあげるんだったな。さあひっつけ、もっとひっつけぇ」
夜が更けていくにつれ寒さがつのるけど、狐はふるえながらチョロッ、ピタッ、チョロッ、ピタッをたのしんでいた。もう少し、もう少しと我慢(がまん)をして、とうとう尾っぽが重くなったと。
「ようし、もういいだろう。それっ」
狐は、力をこめて尾っぽを引きあげた。が尾っぽは水からあがらない。
「こりゃ、魚がいっぱい食いついとるなぁ」
と喜んで、また
「それっ」
と力を込めた。が、やっぱり尾っぽは引き上がらない。
「こりゃ大変だ。早起きの犬か人間に見つかったら、ただではすまん。早いところ魚を持って帰らなにゃあ」
というてあわてたと。
そうこうするうちに夜が明けた。
川は一面に凍りが張っていて、狐の尾っぽも一緒に張りついてしまっていた。
夜中にあった、「チョロッ、ピタッ」は、魚が食いついていたのではなく、流れてきた薄氷(うすごおり)が尾っぽに張りついていたものだったと。
夜が明けたら狐が心配していた通り、人間の嫁ごさまが川へ朝水を汲(く)みに来た。
「あれまぁ、あんなところに狐が尾っぽを凍りに噛(か)まれて身動き出来ないでいるぅ」
狐は嫁ごさまに手桶(ておけ)のかつぎ棒(ぼう)で、叩(たた)き殺されたと。
どんとはらい。
音楽も入ってきて楽しい話しだなーっておもいました( 50代 / 女性 )
他で知ったこのイソップ童話の様な話が日本の民話だというので検索し、このサイトへ辿り着きました。多くの貴重な民話を残して頂き素晴らしいと思います。 因果応報を教える為に作られた話なのでしょう。最後に狐が女性に殺されてしまうのも人間が自然と闘いながら生活していた時代の話であればさもありなんと思われます。農作物に被害を及ぼす害獣であったでしょうし。 大陸から入って来た話が元にあるのかも知れませんが、狐は洋の東西を問わず悪者になってしまうのですね。( 50代 / 男性 )
狐はずるいけれど女に棒で叩き殺されるところが恐ろしいし 残酷ですね 狐は女に何も悪いことはしてないのに其の女は精神病ですか この話は最低レベルですね子供にはこんな残酷な話は良くないですね( 70代 / 女性 )
昔、あるところにひとりの婆(ばあ)さんがあった。婆さんは、お年貢(ねんぐ)の頃に上納(じょうのう)する米の計量(はかり)をちょろまかすのがうまくて、役人は困りはてていたと。
むかし、むかし。土佐の長沢村というところに、延右衛門いう猟師がおったそうな。延右衛門は村一番のえらもんで、どんな山奥でも夜の夜中を一人でのし歩き、ちっとも恐がらんような男じゃったと。
むかし、ある寺に年をとった猫がいたと。ある日、その猫が和尚さんの前にきちんと前足を揃えて「おら、昔からたくさんの鼠を殺した罪ほろぼしに、お坊さんになりたいがで、頭を剃ってくだはれ」と、頼んだと。
「獺と狐」のみんなの声
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