― 広島県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志
むかし、むかし、あるところに、そうべえさんという、それはそれはそそっかしい男がおった。
あるとき、そうべえさんは、一つ山を越えた町のお宮さんへおまいりに行こうと思いたった。そこでカカに、
「明日の朝、町のお宮へ行くから、弁当を作って、枕元に置いておけ。」といいつけた。
次の日、目をさましたそうべえさん、そばにある弁当を急いで風呂敷(ふろしき)につつんで家を出て行った。
山道を歩いていると、ズル―、カタッ、ズル―、カタッと歩きにくい。よ―く足元を見ると、片方にぞうり、片方に下駄(げた)をはいている。これはしくじったと思うたが、しかたがない。そのまま、ズル―、カタッ、ズル―、カタッと町まで歩いて行った。
お宮さんについたそうべえさんは、財布(さいふ)から一文(もん)を出して、ポ―ンと賽銭箱(さいせんばこ)に放り込んだ。ところが、ガチャと妙な音がした。よく見ると、手には一文が残っている。間違えて財布を賽銭箱に放り込んでしまったわけだ。
しまった、と思っても、もう遅い。そうべえさんは、ブツブツいいながら、お宮さんの境内(けいだい)で昼飯を食べることにした。風呂敷をあけると、なんと、中からは、枕が出てきた。
「うちのカカは、弁当と間違えて枕をよこした。こんなもんが食えるか」
と、おこってはみたものの、もう、どうにもならん。
さあ、弁当はないし、腹はすくし、そうべえさんは弱ってしまった。しかたなく、家へ帰ろうとすると、まんじゅう屋があって、うまそうなまんじゅうがならんでいる。大きいのもあるし、小さいのもある。
「おい、このまんじゅう、なんぼだ」
「へい、どれも、一文でごぜえます」
それを聞いたそうべえさん、にこっと笑って、一文を渡すと、一番大きなまんじゅうをつかんだ。
「もし、それは」
「これでいい、これでいい」 そうべえさんは、後もふり返らず、一目散にかけ出した。しばらく行ったところで、そのまんじゅうをパクリと食べると、ガリッと音がして、前歯がかけてしまった。よく見ると、そのまんじゅうは、瀬戸物で作った見本のまんじゅうだった。
腹を立てて家に戻ったそうべえさんは、いきなり、カカの頭をゴツンとぶんなぐった。
そうしたら、
「そうべえさん、何なさる」
という声が、カカの声と違う。よく見ると、となりのカカであった。自分の家とまちがえて、となりの家に入ってしまったわけだ。またしくじったと思ったそうべえさんは、あわててとなりの家から飛びだした。
そのとき、とつぜん、ゴロゴロゴロ―、ゴロゴロゴロ―。とかみなりがなった。おどろいたそうべえさん、今度は自分の家に飛びこんで、
「ただいまは、どうもすんません、どうもすんません」
と、自分のカカに、何度も頭をさげてあやまったんだと
いっちごさっけ。
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長崎では、七月の最後の日曜日、決まって港や深堀(ふかぼり)、三重(みえ)などの村々から、ペーロンのドラの音がひびいてきます。一隻(いっせき)の和船に、三、四十名の若者が、手に手にカイを持って乗り込み、勇(いさ)ましいドラの音にあわせて漕(こ)ぐのです。
昔、豊後(ぶんご)の国、今の臼杵市野津町大字野津市(うすきしのつまちおおあざのついち)というところに、吉四六(きっちょむ)さんという面白い男がおった。
「そこつ そうべえ」のみんなの声
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