悪いことは、いつかはバレる! しかし、のくてぇ〜(福井弁)のぉ〜( 50代 / 女性 )
― 福井県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志
むかし、ある旅の男が金を使い果(は)たして、峠(とうげ)のお地蔵(じぞう)さんの前で途方(とほう)に暮(く)れておったと。
腹は空くし、こころ細いし、この先どうしようかと思案していると、目の前を、身なりのいい旅人が通りかかったと。
男は、いきなり、
「おい、金と荷物を置いていけ」
というて、泥棒(どろぼう)に早変わりをした。そして、事(こと)のついでに、その旅人を殺してしもうたと。
あたりには誰もおらん。お地蔵さんが立っているだけだ。
男は、お地蔵さんに向って、
「おい、地蔵、今見たことを誰にも言うな」
と、口止めをした。そしたら、お地蔵さんが、
「わしは言わんが、お前も言うな」
と、しゃべったと。
男は、びっくりして、その場から逃げ去ったと。
殺された旅人の家では、いつまでたっても父親が帰って来ないので、心配しておった。
あんまり遅(おそ)いので、息子が峠まで迎えに行ったら、お地蔵さんの前で父親が殺されている。
息子は、泣いて泣いて、泣きあかしたと。
葬式(そうしき)をすませると、
「おれは、必ず親の敵討ち(かたきうち)をする」
というて、旅に出たと。
一年が過ぎ、二年が過ぎ、三年が過ぎた。
あるとき、息子は、ふとしたきっかけで旅の男と仲良くなった。二人は連れだって旅をして、あの峠へさしかかったと。
お地蔵さんの前でひと休みしたら、息子に気を許した男が、
「この地蔵は、不思議(ふしぎ)なことに人間の言葉を話すんじゃ」
というた。息子は、
「石の地蔵さんがしゃべるはずがない」
と、本気にしないでいたら、男はむきになって、
「いやいや、本当にしゃべったんじゃ」
「そうかい、では、何てしゃべったや」
「誰にもいうなよ。実は、三年前におれはここで、ある身なりのいい旅人を殺して金と荷物を取ったことがあるんじゃ。やむにやまれずやったことじゃったが、そのとき、この地蔵に『今見たことを、誰にもいうなよ』というたら、地蔵が、『わしは言わんが、お前が言うな』としゃべったんじゃ。いや、驚いたのなんの。おれは跳(と)んで逃げたよ」
と、うちあけ話をしたと。
これを聞いた息子は、顔色を変えて、
「三年前にお前が殺した旅人というのは、おれの父親だ。おれは敵討ちの為に旅をしているんだ。そうと判(わか)ったからには、お前を討って、今日こそ親の無念(むねん)を晴らしてやる」
というがはやいか討ちかかり、親の敵をとったと。
とどのつまりが、地蔵さんの言うとおりになったと。
そろけんぶっしゃれ 灰俵(はいだわら)。
悪いことは、いつかはバレる! しかし、のくてぇ〜(福井弁)のぉ〜( 50代 / 女性 )
不思議なありえない地蔵ですね( 60代 / 女性 )
まさに以前、天知る、地知る、我知ると思いました。
自分が地蔵に言うなといったのにさいご、いってしまった。( 10歳未満 / 女性 )
悪い事をすると周りは誰も知らんが自分は、一生忘れない。以前、天知る、地知る、我知ると言う言葉を教わったことがあります。まさにその通りだなぁとおもいました。( 60代 / 女性 )
むかしあったと。 ある家の父、毎日働かなねであったと。 毎日毎日、火ノンノンとたいて、こっちの肋あぶれば、また、こっちの肋あぶる。今度ァ背中あぶるって、そやってばしいであったと。 ある時、 「貧乏の神、貧乏の神、火ィあたりに来いでぁ」 と言ったと。
むかしむかしの大昔。森の奥で鳥の鷹(たか)たちが大勢集まって、酒盛(さかも)りを開いて、賑(にぎ)やかに飲んだり歌ったりしていたと。何でも、鳥の王様…
「言うな地蔵」のみんなの声
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