なんで 女房になったのでしょう? 人間になりたかったとして、兄様はカラスではいけなかったのでしょうか?( 70代 / 女性 )
― 青森県 ―
再話 六渡 邦昭
語り 井上 瑤
むかし、茶売りの兄様(あんさま)があったと。
兄様は、女房(にょうぼう)をもらうなら飯(まま)を食わない女が欲しいと探していたと。
ある晩、兄様のもとへ一人の姉様(あねさま)がたずねてきて
「おれぁ飯(まま)食わねから、お前(め)ぇ様の嬶(かか)ァにしてけれ」
というた。
挿絵:福本隆男
兄様が見ると、色は少し黒いが働き者だというし、飯も食わないというので、気に入って、その姉様を嫁(よめ)にしたと。
次の日から茶売りの兄様は、姉様に留守(るす)させて商(あきな)いに出かけて行ったと。
兄様が出かけると、きまって、カラスが飛んできて、屋根(やね)にとまってガアガア啼(な)いたと。
夕方になって茶売りが帰ってくると、姉様はちゃんと夕飯の支度(したく)をして待っていた。そして兄様が食べるのをニコニコして見ているだけで、一箸(ひとはし)も食べなかったと。
ある日、兄様が商いに出かけようとしたら、物陰(ものかげ)から隣(となり)の母様(おがさま)が兄様を呼びとめた。
「兄、兄、お前(めえ)の姉様な、あれぁカラスだ。うそでねぇ。うそだと思うたら、隠(かく)れて様子(ようす)見てみればええ」
茶売りの兄様、半信半疑(はんしんはんぎ)で、次の朝仕事に行くふりして家を出て、隣の母様(おがさま)と二人で物陰に隠れたと。
すると、たくさんのカラスが集まってきて、
東五郎(とうごろう)や 東五郎や
そばの川原(かわら)に
馬一頭 死んでいる
食いに 行こうじゃ
と、くちぐちに言うた。
すると、兄様の家のなかから一羽のカラスが出てきて、仲間と一緒に飛んで行った。
茶売りの兄様はびっくりして、その場にへたりこんだと。隣の母様、
「見たか、見たか、やっぱりカラスだ」
「あ、ああ、見た。けど、あれ、ほんとに、俺(お)ら家(え)の嬶(かか)ァだべか」
「たしかめてみるか」
「どうやってだ」
「鳥というのは湯(ゆ)ぅさ入るのが嫌いなもんだ。湯ぅさ入れてみればいい」
というた。兄様が、
「そういわれてみれば、嬶ァが湯ぅさ入ったとこ、一度も見たことが無(ね)えな」
というと、隣の母様、
「色も小黒(こぐろ)いだべ」
というた。
茶売りの兄様は家に戻ってすぐに風呂(ふろ)を沸(わ)かしたと。
しばらくして姉様が家に戻ってきた。
兄様、姉様が嫌(いや)がるのを、
「入れじゃ、入れじゃ」
というて、無理矢理(むりやり)風呂へ入れたと。
挿絵:福本隆男
そしたら、姉様は、
「熱(あち)い、アチ、アチイ」
というて、すぐにカラスになって、ガアガア飛んで行ったと。
とっちぱれ。
なんで 女房になったのでしょう? 人間になりたかったとして、兄様はカラスではいけなかったのでしょうか?( 70代 / 女性 )
とても賢い話ですね。
その後が気になります????( 40代 / 女性 )
昔、盛岡の木伏に美しい娘があったと。毎日家の前の北上川へ出て、勢よく伸びた柳の木の下で洗濯物をしていた。あるとき、その娘がいつものとうり洗濯に出たまま行方がわからなくなったと。
「カラス女房」のみんなの声
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