和尚さん沈んじゃった‼️( 10歳未満 / 男性 )
― 青森県 ―
語り 井上 瑤
再話 大島 廣志
むかし、あったけど。
あるところに、貧(まず)しいけれど、信心深い婆(ばあ)さまが住んでおった。
婆さまは、死んだらば、地獄(じごく)には行きたくねぇ、なんとか極楽に行きたいと思うて、毎日、毎日、お寺参りをしたんだと。
それはそれは、一生懸命(いっしょうけんめい)に仏(ほとけ)さまに手を合わせて、お経(きょう)を唱えたと。
婆さまは、お寺に行くと、ふところから一文銭(いちもんせん)を出して、ポーンとさい銭箱に投げ入れる。そして、お願いがすむと、手に握(にぎ)っている糸をたぐり寄(よ)せ、一文銭をさい銭箱から釣(つ)りあげると、
「仏さま、すんません」
と言うて、家に帰って行くんだと。
寺の欲深和尚(よくふかおしょう)は、婆さまが寺から出ると、すぐにさい銭箱を開けて見るが、いっつも、銭は入っておらん。
「あの、ばばぁめ、毎日毎日、仏さまにお願いをするくせに、一文もさい銭を入れん。あんなばばぁ、極楽なんかやるものか。地獄におちればええ」
と、くやしがっておった。
ある日のこと。
和尚は、仏さまの後ろに隠(かく)れると、婆さまの来るのを待っていた。
そして、婆さまがやって来ると、大きな声で、
「ばばよ。わしは阿弥陀仏(あみだぶつ)じゃ。極楽に行きたくば、わしの言う事をきけ」
と言うた。
「は、はい。仏さまの言われることなら、何でもききますだ」
「よーし。では、まず、寺の池の中にある島にわたり、松の木のてっぺんに登れ」
婆さまは、仏さまの言うことを信じて、汗(あせ)をかきかき、ようやく松の木のてっぺんへ登った。
和尚は、婆さまのあとをついてゆき、松の木の下から、
「ばばよ、左の手を離(はな)せ」
と大声で言うた。
婆さまは、言われた通り、左の手を離した。
「ばばよ、右の手も離せ」
今度は右の手も離した。
婆さまは池の中にまっさかさま。と思うたら、サッと金色の雲が婆さまを受けとめ、そのまんま空高く昇(のぼ)っていったんだと。
挿絵:福本隆男
さあ、欲深和尚はたまげた。
わしも、婆さまのように金色の雲に乗って極楽に行きたい思うて、すぐに寺の小僧(こぞう)を呼(よ)んだ。
そして、さっき婆さまに言うた通りのことを小僧に教えこんだんだと。
小僧は、さっそく、仏さまの後ろに隠れると、
「和尚よ、わしは阿弥陀仏じゃ。極楽に行きたくば、わしの言う事をきけ。まず、池の中にある島にわたり、松の木のてっぺんに登れ」
和尚はうれしくて、うれしくて、スイスイ松の木に登った。
小僧が松の木の下から、
「和尚よ、左の手を離せ」
と言うと、左の手を離した。
「和尚よ、右の手も離せ」
和尚は、ニタリッと笑って右の手も離すと、そのまんま、池の中にドボーン。
和尚は、もがきながら、ブクブク、ブクブク、池に沈(しず)んでしもうたと。
どっとはらい。
和尚さん沈んじゃった‼️( 10歳未満 / 男性 )
むかしむかし、 あるところに爺(じい)さんと婆(ばあ)さんがいだど。 爺さんは七十五、婆さんは七十で、どっちも、目もはっきりしていたし、歯も、漬物ぱりぱりと食っていで、まだまだ達者だったど。
「信心婆さまと欲深和尚」のみんなの声
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