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じぇんこがもっけになったはなし
『銭コがモッケになった話』

― 青森県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、津軽(つがる)のある村さ、そりゃあ、そりゃあ、ケチで欲(よく)たかりの金貸(か)しがいたど。
 ケチもケチも、この金貸しゃあ情(なさ)け容赦(ようしゃ)なく銭(じぇん)コば取りたてるもんで、
 「ありゃ、鬼(おに)だ」
 「あったら金貸しゃあ、早ぐくたばりゃいい」
って、村人も村人じゃねえ人もみんな言うていたど。

 
 その金貸しゃあ、欲たかりの上にまんず心配性(しんぱいしょう)であったから、ある晩(ばん)げ、カメの中にずっぱり貯(た)め込んだ銭コば見ていて、
 「火事(かじ)になったらどうするべ。泥棒(どろぼう)に入られたらどうするべ。はあてどうするべ。どっかにいい隠(かく)し場所、ねえがな」
って、あっちゃこっちゃ探し歩いたど。
 「あそこもだめ、ここもだめ」
って歩きまわって、裏(うら)の畑さ来たど、
 「んだ、ここがええ。ここだば火事になんね。ここだば泥棒も気がつかね」
って、銭コずっぱり入ったカメ、裏の畑掘(ほ)って埋(う)め込んだと。

 
 埋めるとき、金貸しゃあ、
 「こら、銭コや、もし誰か他の者(もん)がお前(め)ば見(め)っけだらモッケになれや、いいか、モッケになるんだどお。俺(おれ)のときは銭コでいろや、いいか、俺のときは銭コでいるんだどお」
って、何度も何度も言うたど。
 モッケというのはカエルのことだ。
 したっきゃ、ちょうどそのどき、お寺の和尚(おしょう)さま、外用事(そとようじ)で遅(おそ)くなって帰って来たどこで、金貸しん家(ち)のそばまで差しかかっていただ。しだら、小便(しょうべん)したくなって、
 「行儀(ぎょうぎ)が悪いけどしょうがねえべ。出るもの所嫌(ところきら)わずだ」
って、着物の前はだけながら道端(みちばた)の木さ寄(よ)り、
 「夜更(よさ)りだし、誰(だれ)も来ねべな」
って、首(くび)ばまわしてあたりうかがったら、間の悪(わる)いことにちょうど金貸しが何やらかかえて家を出て来た。

 
 「ありゃ、あれに見つかったらあとで何言われるか分かんね」
って、木の蔭(かげ)さ隠(かく)れた。そうして、金貸しのすることをすっかり見聞きしたと。
 和尚さま、おかしくってしょうがねえ。そのうち、
 「こりゃ、いいどこめっけだど」
って、急いでお寺へ帰って、池のモッケをたくさんつかまえたど。
 和尚さま、カメの中の銭コばみんな出し、かわりにモッケば入れて知らんふりしていたど。
 
 次の晩、欲たかりの金貸しゃあ、今日取りたててきた銭コを入れようとて、裏の畑のカメを掘り出した。にんまりしながら、
 「俺だや、俺だや」
ってささやいて、カメを開けて・・・びっくりした。
 モッケがピョンコピョンコ、なんぼでも湧(わ)いて出て来たど。

 
銭コがモッケになった話挿絵:福本隆男
 金貸しゃあ、必死(ひっし)で、
 「俺だや、他人でねえ。モッケにならんでもいいがら、元の銭コになれ」
って叫(さけ)んだずども、モッケあ、あっちゃこっちゃピョンコピョンコ跳(と)んでいくずんだ。
 したら金貸しゃあ、泣きべそかいて、
 「こらあ、俺の銭コ、待じろーっ」
ってモッケのあとば追(ぼ)っかけで行ったど。

  とっちぱれ。

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お金のことなら、人を大切にすることをしないなんて怖いと思いました。( 20代 / 女性 )

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