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ひらじょうのひらっこ
『平城のひらっ子』

― 秋田県雄勝郡稲川町久保 ―
語り 井上 瑤
話者 伊藤 雅義
採集 今村 泰子
再話 六渡 邦昭

 むかし、平城のひらっ子という、人だましの上手な狐(きつね)がいたと。
 この狐にかかっては、どんな人でもだまされるので、あるとき、大館(おおだて)の権兵エ(ごんべえ)という若者が、
 「おれなば、その狐に絶対だまされねぇ。逆にあの狐ンことだましてみせる」
というて、平城さ行って、木の株に腰かけて、ひらっ子狐め、さぁ出て来いとばかりにして、黙(だま)って見ていたら、向こうから百姓(ひゃくしょう)の親方が来た。

 
平城のひらっ子挿絵:福本隆男

 「なんだ、権兵エ、そんたらことして」
ときかれたが、こいつ、狐かも知んねえ、と思うて黙っていた。そしたら、
 「俺(おれ)だでぁ、なんだて、そんたに知らねふりさねぇてもいかべ」
といわれた。ンだば狐でねがったかぁ、思うて、ホウと一息吐(は)いて肩の力を抜いた。


 「おお、お前(め)だか、なあんだ」
と、うちとけていろいろ話をしていたら、その親方、
 「やあ、権兵エ、お前婿(むこ)にならねかや」
というた。
 「ンだなあ、場所によってはならね事もねぇども、なんた所だかや」
 「増田(ますだ)の四郎平(しろへえ)親方の家で、婿欲しいていうどもなぁ」
 「ほう、なあんと四郎平親方の家でなあ、俺なの婿にもらうべかや」
 「もらう、もらう。あそこの家の婿になるこつだば、若勢(わかせ)もずっぱり使わねばなんねぇ」
 「へば、晩げ行くちゃや」
 「いい、いい」


て、その晩二人して行ったら、増田の石田四郎平ではなくて、木田黒平(きだくろへえ)とかいてある家であったと。その家に入って、親方が、
 「婿つれて来た」
て、言うたら、
 「そうかあ」
って。その晩げ、大酒盛りしてお振舞(ふるまい)してくれたと。
 「その婿、いい婿だ」
とほめられて、一、二年もしたら童(わらし)コ生まれた。


 その童コ、
 「めんごいなあ、めんごいなあ、なんともハァめんごい奴だなあ」
て、いうていたら、病気になって死んでしまったと。みな、オイオイ泣いて、婿、童コたがいて寝(ね)ていたら、
 「なんだ、権兵エ」
て、誰(だれ)かが呼びかけた。
 「なんだって、死んでしまったおの」
 「なにしたけナ、権兵エ」
と言われて、ハッとした。

 
平城のひらっ子挿絵:福本隆男

 なんと権兵エ、平城の腐(くさ)れ木っコをギチっと抱きしめて、童コ死んだとて、オイオイと泣いていたと。
 やっぱり平城のひらっ子狐にだまされたのであったと。
 とっぴんぱらりのび。

「平城のひらっ子」のみんなの声

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