人間社会でも 人のふんどしで相撲をとるズル賢い人はいます。民話を読んでスッキリしました。( 60代 / 女性 )
― 山口県阿武郡 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかしむかし、ある竹藪(たけやぶ)の中に、大きな虎(とら)が一匹住んでおったと。
虎は日ごろから、ひととび千里(せんり)じゃ、と走ることの早いのを自慢(じまん)にして、いばっておったと。
ある日のこと。
虎が竹藪の中を遊び歩いていると、蝸牛(かたつむり)に出会ったと。蝸牛が、
「虎さん虎さん、毎日こう藪の中にいるちゅうのは、気がめいるもんですな。今日は天気がええし、ひとつ、原っぱの向こう端(ぱた)まで駆(か)け競(くら)べして気をはらそうじゃないですか」
と言うた。虎は、
「なんじゃて、このおれと駆け競べしようてか。おまえ、気でも狂(くる)ったんかい」
と言うて、相手にせんかったと。
そしたら蝸牛が、
「いやあ、わしが日ごろずるずるしちょるからちゅうて、そねえにこけにしなさんな。これでも、いざっちゅうときにゃぁ、あんたに負けるもんじゃない。言うちょるより、さぁひとつやりましょうえの」
と言うたので、つい虎はつりこまれて、
「ふん、それじゃ、やってみるか」
と言うたと。
大きな虎と小さな蝸牛とが、競争(きょうそう)をすることになった。
いちにのさん、の掛け声で走り出したと。
虎は、自慢のひととび千里の勢いで、またたく間に原っぱの向こう端に着いたと。そして、後ろをふりかえり、蝸牛は今ごろ竹の一節(ひとふし)くらいは来たじゃろかい、と思って、今来た向こうを見ていると、後の方から、
「よおい、虎さん、遅(おそ)かったじゃなですか。わしゃあさっきからここに来て、どひょう待っちょりますえ」
と、声がしたと。虎は、
「えー」
と言ったっきり、次の言葉が出てこない。
「も、もういっぺんやろう」
「いいですよ」
となって、元の場所まで、また駆け競べをしたと。
けど、やっぱり虎は負けたと。
虎は不思議(ふしぎ)でならない。気味悪(きみわる)そうに蝸牛を見て、藪の中へ姿を消したと。
実は、蝸牛は虎がとび出すはずみで尾(お)を地面につけたとき、その尾に取り付き、急に止まって尾を払(はら)ったとき虎の向こうに飛んだんだと。
そうとはしらない虎は、それからは蝸牛の前では、ひととび千里などと言って、いばらなくなったと。
これきりべったり ひらの蓋(ふた)。
人間社会でも 人のふんどしで相撲をとるズル賢い人はいます。民話を読んでスッキリしました。( 60代 / 女性 )
むかし、ある寺に年をとった猫がいたと。ある日、その猫が和尚さんの前にきちんと前足を揃えて「おら、昔からたくさんの鼠を殺した罪ほろぼしに、お坊さんになりたいがで、頭を剃ってくだはれ」と、頼んだと。
昔あるところに頓知(とんち)小僧(こぞう)さんがおった。 評判(ひょうばん)になって殿(との)様の耳にも聞こえたと。 ある日、殿さまは家来たちと馬の速駆(はやがけ)をした。駆(か)けて駆けて駆けているうちに海っ端(ぱた)に着いた。
「虎と蝸牛の競争」のみんなの声
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