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すずめときつつき
『雀とキツツキ』

― 鳥取県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、雀(すずめ)とキツツキは人間だったってな。
 ある時、雀のおっ母さんの具合(ぐあい)が悪うてなあ、使いの者が、
 「雀や、雀や。おっ母さんが病気(びょうき)で、せつないけ、早うきてごぜ」
言うて、行ったらなあ、雀はおはぐろつけとったところで、口の縁(ふち)が黒うなっとったのにそのまま飛んで行っただって。

 そしたらおっ母さんが喜(よろこ)んでなあ、
 「お前は、口をすすぐ間も惜(お)しんで、飛んできてくれたけえ、一生(いっしょう)、瓦(かわら)の屋根(やね)に住まいして、瓦の屋根に遊んで、死ぬまで米を食わしてやるけんなあ」
 ちゅうて言いおいて、おっ母さん死んでいかれたって。

 
 あるとき、キツツキのおっ母さんも病気で、
 「お前のおっ母さんも病気でせつないので早うきてごぜ」
って、使いの者をやったらな、キツツキは髪結(かみゆ)いさんに行って、髪を結って、化粧(けしょう)してええ着物(きもの)を着て行った。

 そしたら、おっ母さんはもう死んじゃっとったって。


 「おれがこれ程せつないのに、あの子は大方(おおかた)、手間(てま)を入れて化粧したり、着物を着替えたりしとつに違(ちが)いないけ、こう伝えてくれ。
 『毎日、取っても取れんでも、虫を三匹取って、二匹は仏(ほとけ)さんに供(す)え、一匹は自分が食うように。なんぼ虫がおらんでも、三匹取らんと寝(ね)られんけえな』。」
 ちゅうて言いおかれた。

 
 それで、雀はきたなげな着物を着て、黒い口をしてるけど、瓦の屋根にネ寝泊(ねとま)りして、米を食っとるんもんだ。
 キツツキは美しい着物を着て、真赤(まっか)な顔をしとっても、毎日頭が痛(いた)くなる程、木をつついて、三匹取らんと寝られんのだって。

 むかしこっぽり。

「雀とキツツキ」のみんなの声

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