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くりひろい
『栗拾い』

― 静岡県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、あるところに、母親を亡くした娘があったと。
 やがて、ひとつ年下の女の子を連れた継母が迎えられたと。
 継母(ままはは)は、日が過ぎるにしたがって、継子につらく当たるようになったと。
 ある日、継母は、継子の姉には穴の開いたカゴとお弁当にこうせんを持たせ、実の子の妹には穴の開かないカゴと握り飯を持たせて、栗拾いに出したと。
 昼どきになって、姉はこうせんを食べようとしたが、風にとばされてしまって、わずかしか口に入らなかったと。
 それに引き替え、妹は、握り飯を腹一杯食べて、二人は、また、栗拾いをはじめたと。

 夕方になると、妹は、 

 「私はもう栗が一杯になったから先に帰る」というて、さっさと帰ってしまったと。


 姉はカゴに穴が開いているので、いくら拾ってもカゴ一杯にならない。そのうち、あたりが暗くなって来たと。腹は空いているし、家へも帰られないし、途方に暮れていると、山の上の方に灯(あかり)がともった。
 山を這うように上って、山家を訪ねると、お婆さんがひとり、囲炉裏端に座っていた。
 わけを話して、今晩泊めてくれませんか、と言うと、お婆さんは、
 「この家の主人(あるじ)は鬼で、もうじき帰ってくるが、話を聞けば可哀そうだから、いいでしょう、隠まってあげよう」
というた。


 お婆さんは、継子にあったかい雑炊を食べさせてから、二階へ隠まい、何食わぬ顔をしていたと。
 やがて、主人(あるじ)の鬼が帰って来て、鼻をヒクヒクさせて家の中を嗅ぎまわったと。
 「今日は何だか人臭いな。里から人が迷い込んで来なかったか」
 「いいえ、誰も、鬼の棲む、こんな山家へ来るはずがないでしょう」
 お婆さんは、知らんふりしてごまかしたと。


 二階の継子は一晩中がたがた震えて、眠るどころではない。
 やがて朝になって鬼が出て行くと、ようやくほっとしたと。お婆さんは、
 「恐がらせてすまなかったね、これ、土産だよ」
というて、カゴの穴をふさいで、それに一杯の栗と箱をくれたと。


 継子は喜んで家へ帰り、それを開けてみると、目もまばゆいばかりの宝物が詰まってあったと。
 それを見た継母と妹は、うらやましくてならない。今度は、昨日と反対に、実(じつ)の子の妹に破れカゴとこうせんのお弁当。継子の姉に穴のないカゴと握り飯を持たせて、山へ栗拾いに出したと。

 日暮れ近くになると、姉は妹に、
 「私はカゴ一杯栗を拾えたから、手伝いましょうか」
というと、妹は姉に、
 「いらん。先に帰れ」
というて、姉を追いたてたと。

 妹は、一人後に残って、腹は空いてるし、日は暮れるし、心細くなったけれども、宝物のことを考えて我慢したと。


 やがて、山の上の方に灯りが見えたので、それを目当てに登って行き、昨日姉がしたのと同じようにして二階に上げられたと。
 しばらくすると鬼が帰って来て、また、人臭いと言うたけれども、お婆さんがうまくごまかしてくれた。
 夜が開けて、お婆さんが、
 「さあ、急いでお帰り」
というと、妹は、
 「昨日は、姉に土産をくれた。私にもおくれ」
というた。お婆さんは、じいっと妹の顔を見てから、
 「そうかい、そんなら、お前にふさわしいものを上げよう」
というて、姉のときより大きめの箱をくれたと。
 妹は喜んでそれを持ち帰り、おっ母さんと二人で蓋を開けたと。
 そしたら何と、中から蛇や百足やいろいろの虫が出て来て、とうとうおっ母さんと実の子を食い殺してしまったと。

 おしまい ちゃんちゃん。

「栗拾い」のみんなの声

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驚き

糠福米福の前半をメインにした様な? 姉が貰った宝物の中には、綺麗な綺麗な着物とかも入ってたのかな。( 女性 )

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