民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 大きな話・法螺話にまつわる昔話
  3. 鴨取り権兵衛

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

かもとりごんべえ
『鴨取り権兵衛』

― 岡山県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 むかし、あるところに、権兵衛(ごんべえ)さんという鉄砲撃ち(てっぽううち)の名人がおったそうな。

 この権兵衛さんが、鉄砲をかついで奥の沼に行った時のこと。
 沼には、カモが七・八羽泳いでいる。
 <何とか全部とりたいもんじゃ>
 考えたあげく、権兵衛さんは、鉄砲の尻をブルンと震わせて撃(う)ったんじゃ。 すると、八羽全部に当たった上に、弾(たま)は、まだまだ飛んで行って、向こうの岸で寝(ね)ておった狸(たぬき)にブチ当たった。

 沼では、あっちでも、こっちでも鴨がバタバタもがいている。向こうでは狸が、ガリガリ土をひっ掻(か)いて狂(くる)っておる。


 「いや、はや、こりゃ……」
 権兵衛さん、嬉しくて言葉にならないんだと。
 「とにかく、鴨を拾うべぇ」
と、沼の中にバシャバシャ入っていって、鴨を皆集めると、沼から上がろうとした。
 そのとたん、泥(どろ)に足を取られて、ツルンと滑(すべ)ってしまった。
 <ハッ>と、思って、夢中で岸の草をつかんだら、これが、なんと兎(うさぎ)の耳じゃ。
 「いや、こりゃ、何と……」
 権兵衛さん、いよいよ言葉にならんのだと。
 ようやく沼から上がって狸に近寄ってみると、狸は苦しまぎれに、土をひっ掻いて、山芋を掘(ほ)り出しておった。


 そこで又、山芋をスポンスポン抜いて、ツタを捜(さが)して来て束(たば)ねておると、何かこう、尻のところがモゾモゾするんだと。
 で、フンドシを外してみたら、中には、ドジョウやら、フナやらが沢山(たくさん)入っていた。
 「さては、水ん中で転んだ時、小魚め、驚(おどろ)いて、フンドシの中にかくれ込んだな」
 「こりゃ大漁(たいりょう)じゃ。一発の弾で、鴨と狸と兎。おまけに山芋と小魚とは……」
 権兵衛(ごんべえ)さん、鉄砲撃ちできたえた厳(きび)しいまなこも、この時ばかりは、八の字に下がりっぱなしだったと。

 昔こっぽり、とびのくそ。

「鴨取り権兵衛」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

酒の肴になる ????   ( 70代 / 女性 )

楽しい

権兵衛さんは空飛んだんだねーすごいねー( 50代 / 女性 )

驚き

日本版トール・テール?( 20代 / 女性 )

もっと表示する
楽しい

欲張りはダメだね( 20代 / 男性 )

楽しい

たった1発の弾で、こんなに獲物が取れるなんて偶然すぎるけれども羨ましい( 10代 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

橋立小女郎(はしだてこじょろう)

むかし、丹後の国、今の京都府宮津の天橋立に「橋立小女郎」と呼ばれる白狐がおったと。この白狐はいつもきれいな女に化けて人間をだましていたので、こんな名前がついたのだと。

この昔話を聴く

アラキ王とシドケ王(あらきおうとしどけおう)

 むかし、むかし、九州のずっと南にある喜界(きかい)ガ島(じま)というところに、二人の王さまがおったそうな。  アラキ王とシドケ王といって、ふたりとも、大層(たいそう)力持ちの王さまだったと。

この昔話を聴く

よぞう沼(よぞうぬま)

むがし、むがし。山形の庄内さ向かって行く方さ、炭焼きしたっだ よぞう っていう男いであったけど。そのよぞう、大変に働ぎのええ人でな、仲間の男と二人して、春にもなったんだし、山さ稼ぎに行ったど。

この昔話を聴く

現在886話掲載中!