民話の部屋 民話の部屋
  1. 民話の部屋
  2. 吉四六さんが登場する昔話
  3. 吉四六さんの物売り

※再生ボタンを押してから開始まで時間がかかる場合があります。

きっちょむさんのものうり
『吉四六さんの物売り』

― 大分県 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭

 昔、大分県野津市(のついち)というところに、吉四六(きっちょむ)さんという、面白(おもしろ)い男がおったそうな。
 とっさの時、心のはたらき方が面白いのだと。
 ある時、吉四六さんが打綿(うちわた)を持って臼杵(うすき)の町へ売りに出たんだと。
 が、めったに町へ出掛けなかったもので、道がよくわからん。困っていると、後ろの方から一人の壷売(つぼうり)が、
 「ええ、壷はいらんなあ、ツボはいらんなあ」
と、大声でやって来た。
 「よしよし、このツボ売りの後ろからついて行けば、間違いなく町を一巡(ひとめぐり)できるぞ。こりゃいいあんばいじゃ」 

 
 吉四六さん、何げない顔でツボ売りの後ろにまわった。
 ツボ売りが大きな声で
 「ツボはいらんなあ」
と、売り口上(こうじょう)をいうと、吉四六さんは、あとから、
 「ええ、打綿、ウチワッタ―」
と、売り口上をいう。 
 「ツボはいらんな」
 「え―、ウチワッタ―」
 「ツボはいらんな」
 はたから聞いていると、打ち割った壷、と聞こえるので町の人はクスクス笑って誰も相手にせん。
 ツボ売りは、吉四六さんにお金を渡し帰ってもらった。
 『こりゃ、商売するよりこっちの方がよっほど儲かるわい』
 と喜んだ吉四六さん、次の日は、種売(たねう)りが通っているのを見つけ、そのあとから、古眼鏡(ふるめがね)を棒の先にくくりつけて、ついていった。


 「種はいらんなあ」
と言うあとに続けて、
 「え―、めがね―」
と妙(みょう)な売り声をあげる。
 「種はいらんなあ」
 「え―、めがね―」「種はいらんなあ」
 芽が無い種と聞こえて誰も買い手が無い。
 種売りもまた、吉四六さんにお金を渡して帰ってもらった。
 
 いよいよ味をしめた吉四六さん、その次の日は、魚屋さんの後ろから、フルイを持ってついて行った。
 天秤棒をかついだ魚屋が威勢よく
 「イワシ、イワシ、イワシはいらんなあ」
というと、あとから、
 「ええ、フルイ、フルイ―」
と続ける。


 「イワシ、イワシはいらんなあ」
 「ええ、フルイ」「イワシはいらんなあ」
 古いイワシと聞こえるもので、やっぱり買手が無い。
 魚屋も吉四六さんにお金をやって帰ってもらったと。
 吉四六さん、あしたは、何売りが通るか、待ち遠しくってしょうがなかったと。

 むかしまっこう猿まっこ、猿のお尻はまっ赤いしょ。 
 
※大分県野津市を、語りでは「おおいたけんのづいち」と言っておりますが、正しくは「おおいたけんのついち」の間違いです。
お詫びして訂正いたします。
 なお現在の正式な住所は、大分県臼杵市野津町大字野津市 となっております。

「吉四六さんの物売り」のみんなの声

〜あなたの感想をお寄せください〜

楽しい

面白すぎてお腹が痛い!( 10歳未満 / 男性 )

こんなおはなしも聴いてみませんか?

雨の降る穴(あめのふるあな)

 六月は梅雨(つゆ)の季節だが、昔からあんまり長雨が降ると嫌(きら)われるていうな。  昔、昔、あるところに親父(おやじ)と兄と弟があった。  兄と弟が、夜空を眺(なが)めていると、お星さまがいっぱい出ている。兄は弟に、  「あのお星さまな、あいつ、雨降(ふ)ってくる天の穴だ」というたと。

この昔話を聴く

彦市どんとタヌキ(ひこいちどんとたぬき)

むかし、肥後(ひご)の国(くに)、今の熊本の八代(やつしろ)というところに、彦市どんという、おもしろい人がおって、いつも、人をだましたり、からかった…

この昔話を聴く

言うな地蔵(いうなじぞう)

むかし、ある旅の男が金を使い果(は)たして、峠(とうげ)のお地蔵(じぞう)さんの前で途方(とほう)に暮(く)れておったと。腹は空くし、こころ細いし、…

この昔話を聴く

現在882話掲載中!