― 新潟県新発田市 ―
語り 井上 瑤
再話 六渡 邦昭
むかし、父さと嬶(かか)さと子がおった、嬶さの腹には、また子が出来ていたと。
子を孕(はら)むと、口(くち)が変るって、嬶さ急に山梨(やまなし)が食いとうなってな、おっきな腹かかえ、もぎ袋、背に、うんこら、うんこら山へ行ったと。
いく山越えたかて頃、やっと大きな山梨の木があって、その下に山梨がたぁくさん落ちていた。
嬶さは「よがった、よがった」って、拾(ひろ)ったと。もぎ袋いっぱい拾ったと。
さぁて家行かねばと思ったらもうあたりは暗くなって来た。
しかたない、嬶さ山梨袋、木にしばって、朝まで待つ事にしたと。
するとな、遠くから、葬式(そうしき)の行列(ぎょうれつ)が
ドンガンジャーン ドンガンジャーン
「山梨の木どこだぁ、山梨の木どこだぁ」って、嬶さ「夜、夜中に葬式出すは、化け物だぁ」って、山梨袋忘れて、急(いそ)いで山梨の木に登ったと。だんだん近づいて来たと、見ても、見ても、音だけで、何も見えんて。
「ここだぁ、ここだぁ」って、木の下、鍬(くわ)で、土掘って、死人埋(う)めたと。
嬶さ「おっかねェおっかねェ」って木のてっぺんへごそごそ登って行ったと、その音聞きつけたか、
「やれ、何者だ、取って食うぞう」って、
冷たぁ~い手がヌルヌルって伸びて、嬶さの足つかんだと、ド―ンって嬶さ落されて、食われてしまったと。
家じゃ、いくら待っても嬶さ帰ってこねし村中で探(さが)したが見つからん。とうとう、あきらめたと。こりゃ化け物のしわざじゃ云(い)うてな。
何年かして、子が「父さ、俺、嬶の仇(かたき)取りに行く」って鉄砲(てっぽう)かついで、山梨の木の下へ出掛けたと。
「ここが俺が嬶さが死んだとこか」って、待っていたって。暗くなって来た。そうしたら
ドンガンジャーン ドンガンジャーン
「山梨の木どこだぁ、山梨の木どこだぁ」
って、葬式の列がだんだん近づいて来たって。
「それきた」って鉄砲、(ガ―ン)
ってうったと。
「ケラケラケラ―」当らんかったて、気味悪く笑うと、青い火、ボッボッて燃やして、近づいて来るんだと。
「何者だ、取って食うぞう」
今度は、青い火めがけて、(ガン) って、うった。
すると
「ギャ―」って倒れたと。
朝になると大むじなが一匹死んでいたと。
家へ帰って、村中御馳走(ごっつおう)して飲み食いしたと。
いずこ、むがしが、とっつぁげだ。
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むかし、ある若者が山道を歩いていると、一羽の鶴(つる)が、わなに足をはさまれて、もがいていた。若者は、 「命あるものをいじめちゃならん」 と、わなをはずしてあげた。鶴は、ハタハタと舞(ま)いあがり、若者の頭の上をなんどもまわって、それから、どこかへ飛び去っていった。
「山梨の怪」のみんなの声
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